肺胞を覆っている肺胞上皮細胞は肺の虚脱を防ぐために肺サーファクタントを細胞内の小胞によって細胞外に分泌する。肺胞上皮細胞は、人工呼吸器などによる過度な力により小胞分泌能が減少することが従来研究によって報告されている。一方で、力学刺激により肺胞上皮細胞の細胞骨格は再構築され形態変化が変化する。この形態変化とサーファクタント分泌能の関係は詳しくわかっていない。そこで、本研究では、肺胞上皮細胞の力学刺激に対する形態変化と機能変化を調べた。 実験では、A549細胞(ヒト由来腺ガン化肺胞上皮II型細胞)を使用した。PDMS製のチャンバー上に細胞を播種し、20%の伸展負荷を与えた。小胞の染色にはキナクリン二塩酸塩二水和物を用いた。キナクリン導入後の細胞に伸展負荷を加え、伸展前後の小胞の位置から小胞輸送能を評価した。その後、パラホルムアルデヒドによって細胞を固定し、ローダミンファロイジンで細胞骨格の1つであるアクチンを染色した。観察には共焦点蛍光顕微鏡を用いた。力学刺激に対してアクチンが再構築された時に細胞内の小胞が多く存在していたことから、細胞骨格が小胞種輸送を阻害していることが考えられる。この実験では、固定処理を行なったので生細胞で小胞と細胞骨格の同時観察が不可能であったが、遺伝子導入試薬とローダミンファロイジンを組み合わせることによって生細胞のアクチンの観察も可能となり、生細胞での小胞とアクチンの同時観察も可能となった。 また、血管内皮細胞と肺胞上皮細胞の共培養マイクロデバイスを作成した。このマイクロデバイスには、細胞培養チャンバーの両側に圧力調整チャンバーを設置し、圧力を調整することによって細胞に伸展刺激を加えることも可能である。
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