研究課題/領域番号 |
26350507
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
香川 正幸 首都大学東京, システムデザイン学部, 准教授 (70646702)
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研究分担者 |
松井 岳巳 首都大学東京, システムデザイン研究科, 教授 (50404934)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 睡眠時無呼吸 / 非接触 / レーダー / 心拍数変動指標 / 血中酸素飽和度 / 診断 |
研究実績の概要 |
睡眠中の呼吸障害発生時におけるポリソムノグラフィとレーダー波形を臨床データ31名について比較し、普遍的特徴を抽出した。呼吸振動の振幅変化、胸部・腹部振動間の位相差が発生するタイミング、そして脈波振動から抽出した心拍数変動指標(低周波数帯のLF/HFと高周波数帯のHF)の変化を解析した。最も患者数の多い、上気道が閉塞する閉塞性睡眠時無呼吸発生時の換気量はほとんどゼロとなるが、レーダー振幅は約20%残存し、胸部運動と腹部運動の位相が反転する呼吸奇異運動となることが判明した。一方、脳からの呼吸指令が伝達されない中枢性睡眠時無呼吸ではレーダー呼吸振幅はほぼゼロとなることが確認された。混合性睡眠時無呼吸では、胸部運動と腹部運動の位相差が中間時点において急激に反転することが判明した。 心拍数変動指標について、呼吸障害発生時直後、開始から約5秒後に反射的に副交感神経活性度HFが数秒間上昇するケースが観察された。そして、呼吸障害発生後約15秒で交感神経活性度LF/HFの上昇が始まり、呼吸障害終了後約15秒でピークに達する現象がほとんどのケースで観察された。 以上の呼吸障害発生時のダイナミクスを基に、米国睡眠医学会の診断基準に準拠したレーダー計測の診断モデルを構築した。臨床データ31名と新たに参加した健康な大学生4名に対して、この診断モデルに基づくコンピュータシステムで判定した結果、感度96%、特異度100%(無呼吸低呼吸指標AHI>15判定基準の場合)、感度90%、特異度79%(AHI>30判定基準の場合)の良好な精度が得られた。 睡眠時無呼吸は単独でも生活のQOL低下につながる。また、心臓への過度な負担が原因で心臓肥大、高血圧、糖尿病などを併発するリスクが高いため早期発見が重要となる。本成果は負担の少ない非接触測定の簡易検査技術の実現に貢献すると期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
全体として予定通りの進捗である。一部、心拍数変動指標のダイナミクスの統計処理が遅れているが、脈波計測のためのレーダー要件の整理は計画よりも進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は高齢者対象の診断プログラムの評価・改善を行う。平成28年度はアンテナ、ドップラセンサの改良を計画している。
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次年度使用額が生じた理由 |
マルチモード・マイクロ波センサNJR4232(45万円)の購入を平成27年度に延伸したこと、そして臨床データ収集作業補助費(15万円)が大学院生の協力により不要となったことが次年度繰越の理由です。
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次年度使用額の使用計画 |
高精度レーダーセンサおよびレーダー制御装置の外注試作、そして高齢者対象の睡眠時無呼吸診断プログラムの評価用パソコンの購入を予定しています。
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