研究課題/領域番号 |
26350510
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研究機関 | 大阪市立大学 |
研究代表者 |
佐伯 壮一 大阪市立大学, 大学院工学研究科, 准教授 (50335767)
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研究分担者 |
池渕 充彦 大阪市立大学, 大学院医学研究科, 講師 (70453131)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 生体医工学 / バイオメカニクス / 生体材料学 / 医用生体可視化工学 / 計測工学 |
研究実績の概要 |
次年度までの目標であった,微小圧縮負荷デバイス(PZT)を備えた落射顕微鏡型ダイナミックOCSAシステムは既に構築され,本年度は,ひずみ速度検出アルゴリズムの見直し(特に,軟骨表面部での信号処理法)を実施し目標値としていた計測量(20μm解像度,0.01%ひずみ,50FPS)を達成した.整備されたシステムにて,コラゲナーゼ処理による疑似変性ブタ軟骨を用いて,本システムの診断能力を統計評価した.実際には,静的試験(応力緩和)と振動試験(動的粘弾性)の両システムを構築実施し,軟骨変性度の評価法を構築した.応力緩和試験では,検出されたOA軟骨表層におけるひずみ速度の緩和挙動が低減し,ひずみ速度緩和減衰係数として初期OA軟骨の優位診断が実現できることを示した.動的粘弾性試験では,検出されたひずみ速度の位相平均化処理によって,OA軟骨組織は奥行きに同期振動挙動を示し,ひずみ速度の位相空間勾配値が低減することを統計実証した. 本年度は更に,診断値に粘弾性力学的な説明を与えるため,押し込み試験を別途実施し,1次元離散化バネダンパ3要素モデルを用いた力学パラメータ推定法を構築した.これにより,本診断システムの検出量の理論的裏付けを明確にして考察し,本システムの理論的有効性が証明された. なお,本年度はブタ軟骨だけでなく,前十字靱帯切離手術によって自然発生する家兎OAモデルを用いた実証実験も実施し,ブタ軟骨と同様に有効診断法であることを示した.それだけでなく,実際の臨床システムの構築を目指して,穿刺プローブの試作を行い,ブタ後足関節を用いた穿刺実験によってvivo試験への適用性が示した. 更に逆解析アルゴリズムとして,有限要素法をベースにした逆解析システムを構築した.これは一般逆行列を用いた逆解析法であり,ダイナミックOCSAにて取得される変形ベクトル分布からスカラー分布の逆推定が可能であることを示した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
次年度までの目標であった,落射顕微鏡型ダイナミックOCSAシステムの構築整備は完了し,検出目標値をクリアして妥当性が検証された.特に,ブタ軟骨を用いた妥当性実験は,静的試験(応力緩和)と振動試験(動的粘弾性)の両システムにて,軟骨組織の粘性効果の損失がひずみ速度の時間変化挙動に反映することを統計的に実証し,理論的考察も完了した.軟骨変性度の評価法として,応力緩和試験ではひずみ速度緩和減衰係数,動的粘弾性試験では位相空間勾配を用いて,有意診断可能であることを突き止めている.それだけでなく,前十字靱帯切離手術によって自然発生する家兎OAモデルの関節軟骨を用いた実証実験も実施し,更には臨床実機を見据えた関節内腔に穿刺する穿刺OCTプローブを製作し,ブタ後足関節を用いた穿刺実験により可視化の有効性も確認している.逆解析システムの構築も完了しているため,当初の計画以上に親展していると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,臨床実機を見据えた,関節内腔に穿刺するOCTプローブの改良を行う.特に,加重負荷(変形負荷)デバイスの導入が課題となるが,超音波負荷による変形誘起を取り入れることも視野に入れていく. また,模擬変性OAブタ軟骨での妥当性は十分であるため,前十字靱帯切離手術によって自然発生する家兎OAモデルの関節軟骨を用いた実証実験にて,定量的な診断評価の検討を行っていく. 更に,構築したスカラー場の有限要素2次元逆解析アルゴリズムを,粘弾性特性の逆解析アルゴリズムにアップグレードしていく.推定パラメータのテンソルを簡略化することが課題であるが,既に構築アルゴリズムの定量性は示されているので,実装可能と考えている. これらの研究成果の推進のため,本事業は,基盤Bへのアップグレードを視野に入れて研究推進を行う.特に,穿刺OCTプローブの構築には資金が必要であるため,臨床応用を目指した推進策としては,更なる資金の獲得も視野に入れたい.
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次年度使用額が生じた理由 |
物品購入の際の端数および,研究分担者(医師)の研究成果発表旅費が臨床業務の多忙により消化できずに,59015円の残金が残っている.
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次年度使用額の使用計画 |
次年度に開催される,第31回日本整形外科学会基礎学術集会に既にエントリーしているため,旅費消化を計画している.
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