開発目標であった,落射顕微鏡型ダイナミックOCSAシステムの構築整備は完了し,検出目標値をクリアして妥当性が検証された.特に,ブタ軟骨を用いた妥当性実験は,静的試験(応力緩和)と振動試験(動的粘弾性)の両システムにて,軟骨組織の粘性効果の損失がひずみ速度の時間変化挙動に反映することを統計的に実証し,理論的考察も完了した.軟骨変性度の評価法として,応力緩和試験ではひずみ速度緩和減衰係数,動的粘弾性試験では位相空間勾配を用いて,有意診断可能であることを突き止めている.それだけでなく,前十字靱帯切離手術によって自然発生する家兎OAモデルの関節軟骨を用いた実証実験も実施し,更には臨床実機を見据えた関節内腔に穿刺する穿刺OCTプローブを製作し,ブタ後足関節を用いた穿刺実験により可視化の有効性も確認した.ブタ軟骨および家兎軟骨の粘弾性パラメータの変性依存性を別途力学試験器を構築し検討し,初期変性において粘性係数の劣化が顕著に現れることが判明した.同時に,コラーゲンおよびグリコサミノグリカンの物質量も生化学分析により追従することが明らかとなった.これにより,本開発ダイナミックOCSAシステムの力学的意味が明確になり,検出機器としての妥当性が理論的に明確となった.本システムの臨床機器応用として,径500マイクロの穿刺OCTプローブを開発し,関節腔内に穿刺し,OCT断層像を取得するシステムを構築した.ブタ関節にこれを適用し,臨床システムとしての適用性を確認した.一方,逆解析システムの構築基盤を整え,数値実験により構築システムの妥当性を明らかにした.
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