臨床研究で取得した前眼部全体の断層画像を用いて、角膜だけでなく、水晶体の位置情報も含んだ眼内レンズの埋植位置決定式による解析結果を昨年度に論文として投稿した。この論文で提案した埋植位置の決定式は、既存の決定式(Haigis、HofferQ、Holladay1、SRK/T)よりも正確に眼内レンズの埋植位置を予見できることを示せた。そして、いくつかの指摘を査読者から受けたことにより、加筆修正の作業が本年度当初にまで及んだが、論文を掲載することができた。 前眼部と後眼部の明瞭な立体断層画像の撮影及び眼軸長の計測が一台で行える統合型の眼球撮影OCT装置(特許取得済)の開発に取り組んだ。波長走査型OCTは非常に高感度であるため、光学系内に存在する微弱な反射や光源由来のノイズが固定パターンとして断層画像内に現れてしまう。これらの固定パターンのノイズを高精度に除去するためには、波長走査毎のノイズの強さや周波数等の特性がほぼ等しくなければならない。しかし、波長走査毎に光源から出力される電気的トリガと干渉信号を波数等間隔に取得するためのクロックが非同期なため、干渉信号を取り込むタイミングが波長走査毎にずれてしまい、特性の異なったノイズが生じていた。そこで、ある特定の波長のみを反射する光学デバイスであるFiber Bragg Gratingを用いることにより、光源から出力される光から直接にトリガを生成し、クロックと完全に同期させた。また、角膜表面や水晶体表面の曲率半径を正確に得るには、歪曲のない断層画像が前眼部の広い範囲で必要であり、高精度なテレセントリック光学系を3枚のレンズで構築しなければならない。そこで、曲率が比較的小さい大口径のレンズを使って光学系を再構築した。その結果、これまでは10mm×10mm程度であったテレセントリック領域を、12mm×12mm程度まで拡大することができた。
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