研究課題/領域番号 |
26350513
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研究機関 | 工学院大学 |
研究代表者 |
福岡 豊 工学院大学, 工学部, 教授 (30242217)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 体性感覚フィードバック / 振動刺激 / 等価身体モデル |
研究実績の概要 |
高齢者の転倒による打撲や骨折が問題となっている。姿勢に関わる感覚が衰え姿勢の保持が困難な人に、姿勢情報をフィードバックすることでバランス機能の補助ができる。我々は、そのようなアシスト装置の開発を目指している。 健常者は、姿勢保持実験を行う場合に外部からのフィードバック情報を用いずに姿勢を安定させることができる。そこでH27年度は、身体を模した倒立振子モデルを用い、体性感覚刺激から得られる情報のみでモデルの姿勢を保持するのに適したフィードバック法を検討した。 ヒトの身体動揺は粘弾性を考慮した倒立振子モデルによって近似できる。このモデルを差分化し、足関節モーメントと身体傾斜角を入出力として身体モデルを制御するプログラムをLabVIEWで構築した。被験者の両肩と鎖骨下部に計4つの振動モータを固定した。被験者は振動刺激から得られる傾斜角の情報のみを用いて、入力であるモーメントを操作し身体モデルを50秒間保持する課題を行った。計10名の被験者について、2種類の刺激パターン(モード)を用いた実験を行い、結果を比較した。モード1では、身体モデルの傾きが大きくなるごとに鎖骨下部のモータ、肩のモータを順に振動させ、身体モデルの傾斜角を振動刺激から得られるようにした。電圧振幅は2 V一定とした。モード2では、電圧を矩形波に変更し、傾斜角が大きくなるにつれて周波数が2~6Hzとなるような振動刺激を用いた。 どちらのモードでも8割以上の試行で、振動刺激による体性感覚フィードバックで身体モデルの立位保持ができた。また、モード1のほうがモデルの傾斜角の標準偏差が有意に小さかった。これは、モード1では傾斜角が3度未満のときはモータが振動しないため、上手く制御できていることが被験者にわかりやすいためではないかと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
H27年度の目標は、1リンク倒立振子モデル(等価身体モデル)を用いて、健常者で立位保持実験を行うことであった。そのために必要なプログラムを開発し、10名の被験者について実験を行ったので、目標通りに進展いると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
前年度までの研究成果を踏まえ、振動パターンをさらに最適化し、効率的に傾斜角をフィードバックする方法を探索する。その際、モータの固定法や固定位置についても検討する。適宜、学会等で成果を発表し、生体医工学分野の研究者とディスカッションを行い、研究を発展させる。
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次年度使用額が生じた理由 |
H27年度はほぼ申請時の計画通りに予算を執行したが、H26年度からの繰り越し分がそのままH28度に繰り越す状況となっている。
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次年度使用額の使用計画 |
最終年度であるH28年度には、振動モータや駆動装置、入力装置等のハードウエア関連の充実を図るために繰り越し分を充当する計画である。申請時の計画と合わせて、有効に予算を活用する。
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