研究課題/領域番号 |
26350513
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研究機関 | 工学院大学 |
研究代表者 |
福岡 豊 工学院大学, 工学部, 教授 (30242217)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | 体性感覚フィードバック / 振動刺激 / 等価身体モデル |
研究実績の概要 |
高齢者の転倒による打撲や骨折が問題となっている。姿勢に関わる感覚が衰えて姿勢の保持が困難な人に、姿勢情報をフィードバックすることでバランス機能の補助が可能である。我々は、そのようなアシスト装置の開発を目指している。これまでに、健常者を対象として、身体を模した倒立振子モデルを振動刺激による体性感覚フィードバック情報のみで制御する実験を行い、モデルの傾斜角をどのようにフィードバックすれば、モデルの揺れを小さくすること(すなわち、姿勢の安定化)ができるか検討してきた。 平成27年度は2つのパターンで振動刺激を与え、制御成績を比較した。モード1は傾斜角が3度を超えたら鎖骨下のモータを、6度を超えたらこれに加えて肩のモータを振動させるという単純なパターンである。モード2は矩形波の周波数とデューティ比を傾斜角に応じて変化させるパターンである。実験の結果、モード1のほうが傾斜角の分散が小さくなることが示唆された。しかし、学会等で生体医工学分野の研究者と議論すると、細かく情報を与えるほうが有利であるはずであり、実験結果と矛盾しているという指摘を受けることが多々あった。 そこで、平成28年度は、傾斜角の情報を細かくコードしたモード2を使いこなすには慣れが必要であるとの仮説をたて、それを検証した。具体的には、モード1と2の2パターンの刺激を用いて3日間の実験を行い、慣れるにつれて傾斜角の分散に違いが生じるかを検討した。その結果、それぞれのモードにおいて、慣れるにつれて分散が小さくなる傾向が見られるものの、モード1と2の結果が入れ替わることはなかった。すなわち、平成27年度の結果と同様に単純なモード1のうほうが分散が小さくなった。この結果について考察し、モード2のコーディング法に潜在的な問題があることを示した。すなわち、より細かな情報をフィードバックすることが必ずしも有利でない可能性を示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成28年度の目標は、振動による情報コーディング法の検討であった。2つのモードの比較から、コーディングの際に注意するべき事項を明らかにすることができ、今後の情報フィードバックに関する有用な知見を得ることができた。この成果を平成28年度に開催された学会等で発表することはできなかったが、平成29年度に発表する予定である。なお、平成27年度の研究成果に関しては、国際学会での発表を行った。以上の理由から、概ね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
前年度までの研究成果を踏まえ、振動パターンの最適化法をさらに検討するとともに、研究成果を学会発表し、生体医工学分野の研究者とディスカッションを行う。 なお、本課題については平成29年3月21日に補助事業期間延長が承認されている。
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次年度使用額が生じた理由 |
実験は平成28年度内に概ね計画通りに進んだが、実験の完了が年度末に近かったため、成果発表が平成29年度開催の学会となった。また、論文の採択を確実にするためにも、執筆時間を確保する必要があった。これらの理由で、補助事業期間の延長を申請して、一部予算の執行を平成29年度に先送りしたため。
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次年度使用額の使用計画 |
主に学会、論文等の成果発表のために使用する。
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