研究課題/領域番号 |
26350515
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
神澤 信行 上智大学, 理工学部, 教授 (40286761)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 心筋 / 蛍光タンパク質 / 拍動 |
研究実績の概要 |
本申請では、簡単に心筋の拍動を可視化できるモデル臓器を開発することを目的としている。昨年度までに、ラットの心筋特異的なトロポニンTプロモーター下流にカルシウム濃度依存的に蛍光強度が変化するpGCaMP を導入したベクターを作製し、さらに心筋モデル細胞として知られるP19.CL6細胞にこのベクターを一過性導入した。その結果、細胞の分化に伴って蛍光強度が増大し、明視野で心筋の拍動が確認されるのと同時に蛍光が明滅する様子が確認できた。本年度は、上記コンストラクトを安定導入した細胞株の単離を目的として、細胞へのコンストラクトの導入と限界希釈法によりスクリーニングを実施した。しかし、細胞分化を指標としているため、早期の継代が難しく、単クローンの単離には至っていない。今後は、複数のベクターの同時導入またはタンデムでマーカーとなる遺伝子を乗せたベクターを作出し、効果的にスクリーニングを進める計画である。 一方、ギャップジャンクションを構成するコネキシン(Cx43)については、関連因子を含め、P19.CL6がin vitroで分化する際の発現プロフィールをRT-PCRとReal-time PCRの二つの手法から明らかにした。さらに、心筋組織再生の基盤技術として有用と考えている、繊維状のアパタイトからなるアパタイトファイバースキャフォルド(AFS)を用いて細胞を培養し、Cx43の発現に関しても解析した。その結果、AFS培養ではdish培養とは異なる発現様式を示すことが明らかになっている。 本年度はさらに長期培養のための準備として、AFS内にP19.CL6を播種し、バイオリアクター内での細胞の増殖性について評価した。播種数や培養条件が安定化した後、pGCaMPの導入された細胞についても評価を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初申請では目的を8項目掲げ実験をスタートしている。そのうち、4項目までが昨年度までにほぼ終了している。今年度は⑤モデル細胞への安定的遺伝子導入、⑥培養皿上でのモデル細胞の蛍光測定、⑦生体材料上でのモデル細胞の蛍光測定、⑧Cx43の発現解析が残されている。⑤については新しい手法を考案しなくては目的が達成しないと考えている。⑥については当初の目的は達成している。⑦に関しては、本格稼働を前に準備を開始した。⑧については順調に進行中である。上記のとおり、一項目を除き、本実験は当初の予定通りに進行してる。
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今後の研究の推進方策 |
上記進捗でも記載した様に、コンストラクト安定導入株のスクリーニングで足踏み状態が続いている。原因としては、分化後期に目的の蛍光タンパク質が発現するように設計したため、一回のスクリーニングに数週間を要している。同時並行で実験を実施しているが、継代の多重化により、細胞自体の変質がたびたび見られ、目的とする細胞の単離を困難にしていることが考えられる。そこで、複数マーカー遺伝子同時導入や、複数マーカーをタンデムで乗せたコンストラクトを作出し、スクリーニングを効率化させることを検討している。また、新しい取り組みとして、最近利用されるようになったゲノム改変の技術を用いて、効率よく目的部位にコンストラクトを導入することを検討している。
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