研究課題/領域番号 |
26350516
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
矢那瀬 紀子 東京医科大学, 医学部, 講師 (10210303)
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研究分担者 |
水口 純一郎 東京医科大学, その他部局等, 名誉教授 (20150188)
秦 喜久美 東京医科大学, 医学部, 講師 (30287156)
豊田 博子 東京医科大学, 医学部, 助手 (80468660)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2018-03-31
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キーワード | ナノテクノロジー / がんワクチン / CTL / 樹状細胞 |
研究実績の概要 |
ナノ粒子(NPS)は目的とする組織・細胞への選択的な薬剤送達手段として用いられてきたが、近年では免疫反応の制御法としても注目されている。本研究では、研究協力者のナノキャリア株式会社(加藤、原田)と共に免疫反応をコントロールできるナノ粒子の開発を目的とした。すなわち、ナノ粒子にタンパク質を初めとする抗原や免疫増強物質(アジュバント)を内包し、さらに免疫細胞に対して選択的に反応する抗体を結合することによって効率的かつ選択的な免疫細胞(例えば、樹状細胞(DCs)ゃT細胞)の活性化を誘導し、微生物などに対する感染予防および悪性腫瘍に対する制御法の開発を目指している。このようなアプローチによって治療・予防ナノ粒子ワクチンの開発につなげたい。 NPsは、ポリエチレングリコールからなる親水性ポリマーとポリアミノ酸誘導体からなる疎水性ポリマーによる共重合体であることから、薬物キャリアとなり得て、がん組織等の病変部へ集積(標的化)し、副作用もないことが報告されている。本研究ではモデル抗原卵白アルブミン(OVA)或は内在性癌抗原ペプチド、アジュバント、及びDCs指向性を持つ抗体を内包させたNPs製剤を作製し、抗腫瘍作用及び抗体産生能を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)OVAをモデル腫瘍抗原として用いた系で、OVA-NPsを予めマウスに免疫しておくと、OVA発現腫瘍細胞(EG-7)の増殖はin vivoで抑制された。さらに、腫瘍に対して抑制効果が期待できるIL-7を封入したOVA-NPs -IL-7を用いると、抗腫瘍効果が増強した。しかしOVAを発現していない親細胞EL-4は増殖したことから、NPs製剤は抗原特異的に効果を発揮することが示唆された。OVA-Nps-IL-7を腫瘍接種の1週間前に投与した群では対照群に比べて著明にCTL反応が増加していた。 2)癌抗原ペプチドのTRP-2およびアジュバントCpGにDCs内包し、抗-DCs抗体(anti-DEC205)をNPs粒子表面に結合した製剤(NPs-TRP2/CpG/anti-DEC205)を作製した。マウス悪性黒肉腫細胞株B16-F10をマウス皮下に接種し、生着が確認された5日目、およびその一週間後の12日目にNP-TRP2/CpG/anti-DEC205製剤を投与して、腫瘍増殖を経時的に確認した。比較対照群では15日目に腫瘍サイズが459mm3であったが、NPs-TRP2/CpG/anti-DEC205投与群では42mm3と腫瘍の増殖を強く抑制していた。さらにNPs-TRP2/CpG/anti-DEC205製剤が投与マウスの樹状細胞(DCs)活性化をフローサイトメーター解析にて確認した。NPs-TRP2/CpG/anti-DEC205投与群では対照群と比較して所属リンパ節でCD11c+ CD86+細胞も増加していたことから、活性化したDCsが増強されていることが明らかになった。 以上のことから、今回設計したNPs-TRP2/CpG/anti-DEC205製剤は予防、治療ワクチンとして有用であることが示された。
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今後の研究の推進方策 |
得られた結果をさらに進展させて、非臨床試験を行いヒトへの応用を図る。すなわち、免疫系がヒト化したマウスを作成し、ヒト乳がん細胞を接種してヒト腫瘍モデルを構築する。同時にヒト樹状細胞特異的抗体、ヒトがん抗原、アジュバントを有したナノ粒子を設計、作成してヒト腫瘍モデルマウスにて有効な製剤を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
マウスを用いた実験では、結果を得るまでに時間を要し、そのために実験計画が次年度に繰り越すことになった。
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次年度使用額の使用計画 |
マウス購入費および維持費、実験解析に使用する。また、論文報告、学会報告でも使用する予定である。
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