Type I コラーゲン溶液から原線維を再構成させ,この過程で起こるコラーゲン分子間の力学的相互作用をQCMを用いて解析するとともに,再構成原線維の引張試験と微細構造観察を行った. 水晶振動子を装着したウェル型セルのカップ部にコラーゲン溶液をマイクロピペットを用いて滴下した.その後,再構成用緩衝液を滴下して,コラーゲン原線維を再構成させた.次に,この水晶振動子を蒸留水で洗浄・乾燥させた後,コンドロイチン硫酸Bをセルのカップ部に滴下し,水晶振動子上に形成された原線維に吸着するコンドロイチン硫酸Bの吸着量を得られた周波数の変化量から算出した.その結果,コンドロイチン硫酸Bにはコラーゲン原線維同士を結合する作用があることが明らかになった. コラーゲン溶液と再構成用緩衝液を送液ポンプを使用して,水晶振動子を装着したフロー型セルに流し込み,流速や流れの方向を変化させて,コラーゲン分子に種々の力学的刺激を加えながら原線維を再構成させた.その結果,流れを与えても吸着する原線維の配向に影響は現れなかったが,コラーゲン濃度が高いと長い原線維が多数再構成された.また,原線維を再構成させた後,蒸留水を流すと,吸着していた原線維の一部が脱離し,その脱離量は流れの向きにより変化することが明らかになった. 再構成原線維の力学的性質は独自に開発した引張試験システムを用いて調べた.その結果,得られた再構成原線維の力学的性質と生体内の腱を構成している原線維の力学的性質の間で有意差はなかった.また,両末端にテロペプチドを持つ分子から再構成された原線維に比べて,テロペプチドを持たない分子から再構成された原線維の力学的強度は小さいことが明らかになった.
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