研究課題/領域番号 |
26350520
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
天野 晃 立命館大学, 生命科学部, 教授 (60252491)
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研究分担者 |
野間 昭典 立命館大学, 生命科学部, 非常勤講師 (00132738)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 薬物作用 / 心筋細胞モデル / イオンチャネル / パラメータ最適化 / 吸引電極 / 活動電気波形 |
研究実績の概要 |
昨年度は,まず,動物実験データの計測方法として,現在までに行ってきたランゲンドルフかん流心を用いた方法以外に,in situ による吸引電極法による活動電位波形の計測方法を確立した.この方法を用いた計測では,体温や血圧,血流などの状態を含め,生体に極めて近い状態で活動電位波形を計測することが可能であることが確認できた.また,下肢大腿静脈から薬物を投与する方法も確立したため,薬物による活動電位波形変化が安定して計測できることも確認できた.in situ 吸引電極法の問題点としては,心臓の露出面積が少ないため,計測可能な面積が少なく,大量のデータを計測することが困難であること,また,薬物が体内を循環して濃度が変化するため,薬物の作用を見るときに,心室筋細胞そのものに対する薬物の濃度が正確にはわからないこと,さらに,心拍数が比較的高くなるため,シミュレーションモデルで想定している単離細胞の刺激頻度との間に乖離が生じる,という点が挙げられる.これらの問題に対して,まず,計測点として左心室と右心室,さらに,計測時間として短時間と長時間を設定した場合に,それぞれの組み合わせで,どのような波形が得られるかを確認した.その結果,以降の実験では,左心室に対する短時間の計測を行うことが最も安定性が高いことがわかった.次に,計測された波形を用いて,5つのイオンチャネルの阻害率を推定した.刺激頻度の調整が行われる前の予備的な解析では,特に創薬で問題になるHERGチャネルの推定はかなり高い精度で可能であることが確認できた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画で想定していた,外注による動物実験データの計測に関しては,昨年度より,本研究でより安定した計測方法の開発を行うこととしたが,昨年度の計測方法の開発により,極めて安定した活動電位波形の計測が可能な方法が開発できた.計測された波形を用いた薬物作用の推定に関しては,開発した計測方法と,従来のランゲンドルフ系を用いた計測との差があるため,まだ予備的な評価しか行えていないが,シミュレーションモデルの調整とデータベースの再構築を行うことで,当初予定に沿った薬物作用推定が可能である目処は立っている.
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今後の研究の推進方策 |
今年度は,まず,動物実験データとして,IKr, IKs, ICaL, INa の4つのチャネルを阻害する選択的ブロッカーを用いた活動電位波形の計測を行う.また,追加的に,左心室内圧の情報も計測し,薬物作用推定に利用することを考える.次に,活動電位波形からのイオンチャネル阻害の推定システムとして,心拍数の変化を良好に再現可能な最新の心室筋細胞モデルを利用し,in situ 計測において問題となる心拍数の変動に対する対応を行う.さらに,現在,高精度な推定を行う場合,1週間程度の時間を要しているシステムについて,波形照合アルゴリズムを改良することと,データベースのハードウェアを高速化することで,数時間で推定が可能なシステムを実現することを目指す.
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度までに,主に計測手法の開発を行ったため,当初予定していた外注による予算は研究期間後半にまわすことになり,この部分の計画が変更になった.また,計測波形の確認ができてから計算システムの設計を行う必要があったため,昨年度までに並列計算が可能なシステムの購入を見合わせた.これらの機器は今年度整備する予定である.
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次年度使用額の使用計画 |
今年度は,更に,計測される情報として,活動電位以外に細胞の収縮力を表す左心室内圧を導入することを考えており,この計測に必要な装置を購入予定である.また,活動電位波形の性質が確認できたので,波形に対して薬物作用を推定するソフトウェアを実行する高速なシステムの設計が可能になり,本年度整備する予定である.
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