研究課題/領域番号 |
26350521
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研究機関 | 関西大学 |
研究代表者 |
田地川 勉 関西大学, システム理工学部, 准教授 (80351500)
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研究分担者 |
田窪 孝行 大阪医科大学, 医学部, 名誉教授 (60163359)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 赤血球変形能 / 形状回復時定数 / 糖尿病 / 膠原病 / 血液分析チップ |
研究実績の概要 |
赤血球形状回復過程の時定数によってその変形能を評価することを目的として,①糖尿病やその合併症としての腎症患者を対象とした評価と一般的な血液検査指標との相関関係の解明とデータベース構築,②より高速で簡便な操作で検査・評価できるシステムおよび解析プログラムの構築,の2点を主に行ってきた. まず,後者の②については一昨年度の新たに設計したシースフロー式血液検査器に組み込み可能な新たな流路チップを完成させた上で,これまで最も時間を要していた画像処理による個々の赤血球の形状回復時定数の測定アルゴリズムを最適化することによって処理時間をを1/10以下にすることが可能となり,比較的短期間で多数の検体を対象とした測定・評価が可能なシステムの構築ができた.ただし,検査前や検査中の血液のハンドリングの煩雑さについての問題がいくつか残っており,その解決が次年度の課題となる. つぎに,前者の①糖尿病関連の血液検体を対象とした評価については,前述の通り処理することができる速度が圧倒的に向上したことにより,一昨年度は遅れ気味であったデータベース構築に必要な検体数についてはある程度満足できた.しかしながら,特に腎不全などを併発している慢性的な糖尿病の検体については入手性の悪さは解決できなかったため,データベースの構築については,糖尿病と同様に末梢循環障害が代表的な症例の1つとして挙げられる膠原病の検体を新たに測定対象として,様々な投薬などによる病態管理状況の検体100例以上を対象とした測定を行った結果,健常と考えられる検体群と比べると,膠原病患者群は明らかに形状回復時定数が長くなっており,それと血液検査指標としての赤血球数との間で相関を取ると負の相関があり,本評価法によって膠原病由来の末梢循環障害の程度が評価できる可能性が示唆された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
依然として特定の患者群に絞った血液検体の入手性の悪さは解決できていないが,当初の予定には無かった膠原病患者を対象とした評価が順調に進んでおり,これらを合わせた形でのデータベース構築としては順調に進んでいると考えている.
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今後の研究の推進方策 |
より検査効率を上げるために前年度設計したマイクロ流体チップ(以下,チップと略す)を使った評価と新たに最適化した画像処理プログラムによって,かなり実験・作業効率は向上したと言えるが,まだ万人が簡単に検査できる様なシステムとするにはいくつかの問題点が残っている. 具体的には,チップ中での血液検体の付着による詰まりの発生,検体入れ替え時のチップの洗浄,血球を流す速度などの条件の不安定さ等である.これらを解決することによって,先に示した問題の多くが解決することから,研究協力者の大阪医科大学付属病院の臨床検査技師などのアドバイスを参考にしながら,より簡便で確実性が高く,再現性のある検査プロトコルを構築すると共に,必要に応じてチップや評価系の改良を行う.また,これまで対象としてきた糖尿病や膠原病の検体数を増やすだけで無く,必要に応じて末梢循環障害を引き起こす他の疾患やさらには健常と考えられる検体も対象とした評価例を増やしていくことで,より信頼性の高いデータベースの構築を目指す.
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次年度使用額が生じた理由 |
昨年度,設計・試作した血液分析チップについて,当初の予定では性能評価の後に数回の試作調整を予定していたが,設計時に予定していた性能がほぼ得られていたことから,その必要がほとんど無くなった.研究の遂行および補助金を有効に執行する観点と現時点での研究目標への到達度を鑑み検討した結果,補助金の一部を次年度に繰り越す事としたため,差違が生じた.
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次年度使用額の使用計画 |
既述のとおり,次年度はより再現性があり,精度の高い評価システム構築のため,評価プロトコルの策定とそれによるデータベースの構築を予定していることから,新たな試薬などの購入が増えることが予想される.また,蓄積してきたデーターベースがある程度の規模になり,その臨床分野への応用を考えると,医師などへ本手法の紹介のために,学会での発表等も増えることが予想されるため,それら費用に対する支出を計画している.
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