(1)高照度光療法(BLT)前後での運動症状の評価、解析 前年度に引き続いて、睡眠リズム障害があると思われるパーキンソン病患者に対してBLTを実施し、その前後で睡眠問診票によるスコア、運動機能評価を行い、データを蓄積した。 (2)パーキンソン病患者のBLT治療に最適な治療プロトコルの開発 これまでの実績をもとに、パーキンソン病患者のBLTプロトコル最適化に向けて、毛根による末梢の時計遺伝子発現の概日位相を引き続き検討した。睡眠リズム異常があるパーキンソン病患者12名(男5名、女7名)に対してまず問診票による睡眠評価(JESS、PDSS-2)を実施し、被験者は起床・食事・就寝時刻などを一週間以上一定に保った。試験日には24時間にわたって、6時間ごとに毛根(髪の毛またはあご髭から)を5本程度採取した。毛根に付着した細胞から、時計遺伝子の発現量(Period3、Nr1d2)を測定した。これらのデータより、コサインカーブフィッティングを行うことで概日時計位相を決定した。以後、12週間以上BLTを継続した時点で、再度睡眠評価および毛根採取を行った。その結果、約1週間の短期照射で毛根を評価した患者においても、すでにPer3遺伝子の位相後退傾向が見られ、12週間の光照射ではJESS、PDSS-2などの睡眠スコアの改善とPer3遺伝子発現ピーク時刻の後退に明らかな相関傾向がみられた。これにより、BLTによって概日リズムの位相調節が可能となり、睡眠の改善につながる可能性が示唆された。この手法を用いて概日リズムを評価することで、患者ごとに最適なBLT照射時間を決定し、治療プロトコルの最適化が実現できると考えられた。
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