研究課題/領域番号 |
26350530
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研究機関 | 東京女子医科大学 |
研究代表者 |
山田 理恵 (鵜頭理恵) 東京女子医科大学, 医学部, 特任助教 (70593169)
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研究期間 (年度) |
2015-03-01 – 2018-03-31
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キーワード | 膵島 / 肝細胞 / ハイドロゲル / コラーゲン / 組織工学 / 細胞治療 |
研究実績の概要 |
本年度は,移植可能かつ高機能な膵島様組織の作製を目指して、膵島様組織のサイズの最適化を行った。微細加工技術を利用して作製した円形のハイドロゲル製微小チャンバーを用い、その内部にラット膵島をトリプシン/EDTAにて単離した膵島細胞を導入することで,大きさを制御した直径50~200ミクロン程度の膵島様組織を作製した。100ミクロン以下のサイズの小さい膵島様組織では、サイズの大きなものに比較し、細胞死の割合が低く、インスリン分泌量は有意に高値であった。また、小さいサイズの膵島様組織では、α細胞が辺縁部にβ細胞が中心部に位置し、生体に類似した細胞配置が観察された。これらのことから100ミクロン以下の膵島様組織を作製することで細胞死の割合が低く、インスリン分泌能が高い高機能な膵島様組織を作製できることが明らかとなった。 また、マイクロ流路を用いて細胞サイズの微小コラーゲン粒子の作製を行い、肝細胞と微小コラーゲン粒子の混合培養系の開発を行った。HepG2もしくはラットから分離した肝細胞をコラーゲン微粒子と比率を変え混合し、円形のハイドロゲル製微小チャンバー内に播種し、大きさを制御してスフェロイドを形成させた。その結果、通常のスフェロイド培養に比較し、コラーゲン微粒子混合群は、アルブミンや薬剤代謝酵素遺伝子の発現が高かった。これらのことから、微小コラーゲン粒子を肝細胞と混合し、スフェロイドを形成することで、高機能な肝組織体を形成できることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
実験を行う予定だった小動物実験室で、マウス肝炎ウイルス感染事故が起こり、感染症対策のためにすべての動物は処分され、実験室は数ヶ月間封鎖された。数ヶ月後ラットを用いた実験の再開が許可されたが、対策不十分のために、マウスを用いた実験の再開は許可されなかった。このため研究計画を一部中止または変更せざるを得なかった。今年度、作製した組織体を免疫不全マウスへ移植する予定であったが、来年度以降に計画を遅らせる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
次年度は、昨年度に引き続きin vitroで移植に適した高機能性肝または膵組織体の作製を行う。細胞外マトリックスは肝・膵細胞の生存や機能に大きく寄与していることが知られている。そこで肝・膵細胞とマイクロ流路を用いて作製した直径数十ミクロンのコラーゲンファイバーやコラーゲンまたはマトリゲル微粒子等の生体と親和性の高いスキャホールドを混合して培養し、移植に適した肝・膵組織体の作製を目指す。肝組織体についてはアルブミンの分泌量および尿素合成能等、膵組織体についてはインスリン分泌量を指標に、その機能維持向上を図る。また、免疫隔離能を付与するプロセスを開発する。微小ウェル構造あるいはマイクロノズルを利用して,アルギン酸あるいはアガロース等のゲルによってコーティングを行い,その機能の評価を行う。作製した組織体を病態モデルマウスに移植し、生着率、細胞治療効果を検証する実験は、当面の間行うことができない可能性もあることから、in vitroにて細胞マトリックスを利用し、高機能性かつ生体に生着しやすいと予想される組織体の作製を行う予定にしている。
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次年度使用額が生じた理由 |
ラットからの細胞分離や分離した細胞を利用してin vitroで作製した組織体を免疫不全マウスに移植をする予定だったが、小動物実験室でマウス肝炎ウイルス感染事故が起こり、実験室が数ヵ月間封鎖された。当該年度内にラットを用いた実験は許可されたが、感染対策に目途がたたなかったために、マウスの使用許可がおりなかった。実験計画の一部中止または変更を余儀なくされ、そのために次年度使用額が生じた。培養用試薬や器具類等は現有のものを使用した。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は所属機関を変更する予定である。異動先の研究室では小動物実験を行っていないために、動物飼育および肝・膵細胞分離に必要な試薬,消耗品、器具類、機器類をすべて買い揃え、実験環境を整えるために使用する予定である。
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