本研究は,肝細胞または膵島細胞を用いて,in vitroで移植可能かつ高機能な組織の作製を目的としている。平成29年度は,in vitroで高機能な肝組織や膵島組織を作製するためにI型コラーゲンやマトリゲルを用いて細胞の足場材料の作製の検討を行った。特に,マイクロ流体デバイスを用いることで直径が制御可能なコラーゲンマイクロファイバーを簡便かつ連続的に作製する手法およびその断片化の条件検討を行った。 平成30年度は,ラット肝細胞と前年度に作製した断片化コラーゲンマイクロファイバーを混合してスフェロイド培養を行い,肝細胞の生存率や機能(アルブミン分泌量,尿素合成量,薬剤によるCYP1A,CYP3Aの誘導能など)を評価した上で,従来のスフェロイド培養との比較を行った。その結果,コラーゲンマイクロファイバーを内包した肝スフェロイドでは,通常のスフェロイドと比較して高い生存率を認め,また,アルブミン分泌や薬物代謝活性などの肝機能の向上も認められた。これらのことから,作製した断片化コラーゲンマイクロファイバーは,細胞の足場材料として有用であり,肝細胞の生存率および機能の向上に寄与することから肝組織工学や移植への応用が期待できた。また,平成30年度は,マイクロ流体デバイスを用いて細胞を充填することのできる中空状のマイクロコラーゲンチューブの作製法の検討等も同時に行った。しかしながら,作製に時間がかかるために,肝細胞の生存率が低くなる傾向が認められた。中空状のマイクロコラーゲンチューブ作製の研究は,今後さらなる検討が必要であると思われた。
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