研究課題/領域番号 |
26350531
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研究機関 | 東京女子医科大学 |
研究代表者 |
秋山 義勝 東京女子医科大学, 医学部, 講師 (20349640)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | ポリジメチルシロキサン / 温度応答性高分子 / 伸展 / 収縮 / 細胞培養 / 再生医療 / 細胞シート |
研究実績の概要 |
専用の伸縮デバイスの作製の開発について着手し、モーター駆動型の一軸方向への伸展デバイスを試験的に作製した。xyの二軸方向に伸縮可能なデバイスの作製も検討し、試作機を作製したが、細胞培養へ応用した場合、基材形状が複雑化するため、一軸方向のみに伸展可能なデバイスを用いて研究を推進することにした。チオキサントン系の開始剤を固定化した表面に関して、光照射によって温度応答性高分子を固定化し市販の伸展デバイスを用いながらX線電子分光法(XPS)、表面接触角測定、走査型電子顕微鏡(SEM)で 表面の物性を評価した。温度応答性高分子を固定化する前のPDMS表面に濃硫酸存在下において、チオサリチル酸の導入をXPSで確認した。S 1sのスペクトルから硫酸基とチオキサントン基が3:4の割合で表面に存在することが確認できた。さらに、触媒となるアミンを含むモノマー水溶液を光開始重合剤が固定化された、PDMS表面に塗布し、光照射を行うことで目的とする高分子が固定化されたことをXPSで確認した。SEMによる、表面観察および断面の観察から、数百ナノメートルの高分子層が形成されていることが示唆された。また、基材の伸展・収縮刺激によってクラッキングが極めて起こりにくいことも示唆された。高分子固定化後のPDMS表面の接触角は110°から80°付近に減少した。また、伸展デバイスにより高分子固定化表面の接触角を測定した所、基材を伸展させることで接触角の優位な上昇が確認できた。さらに、細胞培養による評価から、伸展させた基材の方がより効率的な細胞接着が確認できた。これらの結果から、目的とするチオキサントン基がPDMS表面に導入され、光照射により光重合開始剤として機能し、さらに目的とする高分子がPDMS表面に固定化されていることが明らかとなった。AFMによる表面物性の評価を計画していたが、装置故障のため本年度は断念し、代替としてSEMによる表面物性の評価を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は目的とする温度応答性高分子を固定化した基材の作製条件の最適化を図り、これを達成した。さらに、作製した基材の物性評価から固定化した高分子の物性が伸展により変化し、細胞接着性に影響を与えることが示唆された。一方、基材の伸展・収縮デバイス開発は当初の計画通りに進行し、モーター駆動型の伸展デバイスを作製した。
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今後の研究の推進方策 |
一軸方向に伸展可能なデバイスの開発から、xyの二軸方向に伸縮可能なデバイスの作製を行うにはより、複雑な基材形状が求められることが明らかとなり、一軸方向に伸展可能なデバイス開発をメインとして進める。当初の二軸方向のデバイス開発は中断となるが、基材の伸展による高分子層の物性変化の影響は一軸方向の伸展でも十分に評価できることから、当初の研究目的には変更はないと考えている。平成27年度の結果を踏まえ、最終年度では、作製した基材が接着でき、かつ、培地を添加させた状態で伸展可能なデバイスの設計を行い、その作製を試みる。さらに、作製した温度応答性高分子固定化PDMS基材を使い、伸展率を変化させた際の細胞接着性、温度変化による剥離性の変化や細胞シートの作製への応用を行う。この際、セルライン化された細胞をはじめ、細胞シート化が難しい、小動物等の組織から採取したプライマリー細胞を使い、細胞シート作製のための伸展培養方法についても研究を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度は主に温度応答性高分子固定化基材の作製条件の最適化を行い、予想以上に最適化の条件が本年度の早い時期に決めることができた。これにより、本研究所が所有する機器分析を用いることで、十分な物性評価を行うことができ、予算を節約することができた。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は種々の細胞を用いた、細胞シート作製への応用を計画しており、小動物等の購入およびプライマリー細胞の購入を計画している。種々の細胞種を用いることで、作製した基材の特性を幅広く評価できると期待している、
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