研究課題/領域番号 |
26350533
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研究機関 | 明治薬科大学 |
研究代表者 |
伊藤 智子 明治薬科大学, 薬学部, 客員研究員 (80372910)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | DNAワクチン / 遺伝子治療 / ガン免疫治療 |
研究実績の概要 |
ガンを標的としたDNAワクチンの実用化のためには、多くの患者に共通する腫瘍抗原を標的にすることが望まれる。しかし、そのようなガン共通抗原は見つかっていない。我々は、腫瘍抗原ではなく、微生物抗原の遺伝子を腫瘍細胞に導入して「危険信号」を発現させ、免疫システムを惹起する新戦略を考案した。そこで、我々は、免疫機構を惹起するための「危険信号」として、抗原性の高い結核菌タンパクの遺伝子を導入することを試みた。初めに結核菌タンパクESAT-6の遺伝子をコードしたプラスミドを合成し、生体内で高発現するコンドロイチン硫酸被覆型DNA複合体を調製した。得られたコンドロイチン硫酸被覆型DNA(ESAT-6) 複合体を、B16メラノーマ細胞を移植した同系担癌モデルマウスに局所投与したところ高い抗腫瘍効果が見られた。これらの腫瘍増殖を抑制するメカニズムを調べるため、DNA(ESAT-6) 複合体の投与回数を変えて処置したマウスの腫瘍、血清をそれぞれ採取し、免疫染色及びIFN-γの産生量を測定した。リン酸緩衝液を投与したマウスでは免疫応答が全く観察されなかった。一方、DNA(ESAT-6) 複合体を投与したマウスは4日後には顕著な腫瘍退縮を示し、縮小した腫瘍組織中には、T細胞、単球系の細胞の高い集積が見られた。また、治療後のマウスの血液をESAT-6抗原とインキュベートすると、IFN-γの高い産生がみられ、抗ESAT-6 細胞性免疫の誘導が確認された。 次に、微生物抗原と免疫賦活化タンパクとの併用効果を検討するため、結核菌抗原であるESAT-6遺伝子およびAg85B遺伝子を用いてDNA複合体を調製し、様々なサイトカイン遺伝子のDNA複合体と坦癌マウスに同時投与した。適切な結核菌抗原とサイトカインの組み合わせ・混合比で投与すると著しい相乗効果がみられ、腫瘍の完全な消失が観察された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究実施計画に基づいて、ESAT-6遺伝子、Ag85B遺伝子を用いてDNA複合体を調製し、小動物における抗腫瘍効果の評価、メカニズムの解析を行った。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き担癌マウスを用いた実験を行いながら、研究協力者の獣医師とディスカッションを重ね、中型動物の原発性腫瘍に対する治癒効果を評価する。
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次年度使用額が生じた理由 |
細胞培養用培地の納品が遅れたため。
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次年度使用額の使用計画 |
細胞培養に必要な試薬、治癒の実験や抗腫瘍効果の解析に必要な試薬等を購入する。得られた研究成果の発表のため、学会への参加旅費に使用する。
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