患者負担の少ない消化管内検査を目指して、体内を傷つけることなく移動できるカプセルの研究開発を行った。研究期間内に達成した成果は次のとおりである。 (1)消化管内移動のメカニズム検証及び解析 (2)カプセル用カメラ選択検討とテスト基板への実装、検証 (3)大腸モデル及び動物の腸管を使った検証 現在の走行カプセルの問題点は、移動方向が前後に限られていることである。そこで、当初は任意方向へ移動する駆動機構の研究を計画した。しかし、医療関係者への聞き取り結果から、任意方向移動よりは大腸内を肛門から逆走して撮影できることが、大腸内検査の時間短縮になり、大腸疾患患者数が小腸疾患患者数よりはるかに多いこと、ニーズ面、市場面でも重要であることが判明した。また、自走化したカプセルは走行機構でカプセル内空間が占められているものの、消化管内の検査に使用するためにはカメラ搭載が必須でありそのための空間をカプセル内に確保するよう走行機構を小型・強力化する必要がある。そこで、従来の小腸用カプセルよりも5mm長い大腸用カプセルボディを制作し、相当する長さで強力化した駆動機構(リニアアクチュエータ)を開発した。強力な永久磁石の組み合わせ、コイルの巻き方の工夫、部品の加工精度を増し、摩擦力低減による高効率化を総合して、従来の10倍の駆動力である2Nを達成した。さらに大腸モデルや動物の腸管を用いて移動が可能であることを実験により検証した。本研究が独創的な点は、滑らかな外形を持つ微小なカプセルでありながら、管内を自走するメカニズムを実現したことである。駆動原理は単純であり、より微小なサイズにも適用できる。医療に適用できる新たな誘導メカニズム、動力機構を提案した。
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