研究課題/領域番号 |
26350541
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研究機関 | 岩手県立大学 |
研究代表者 |
土井 章男 岩手県立大学, ソフトウェア情報学部, 教授 (60271839)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 術前計画支援 / テイラーメイド医療 / 人工関節 / 骨折用プレート / 骨切り術 / CT画像 |
研究実績の概要 |
急激な高齢化により、骨粗鬆症による骨折や擦り減りによる変形性関節症等の発生件数が増加している。治療には、主に骨切り術や人工関節置換術が行われる。本研究では、これらの手術を支援するために、CR、CT、MR画像から取得した人体の3次元情報を利用して、1)個体差(骨密度、骨形状、体重等)を考慮した3次元シミュレーションが可能な人体モデルの自動構築、2)テイラーメイド医療・ロボット手術のための術前計画支援・術中支援システムの研究開発、および、3)上記の試みに適した人工関節、骨折用プレート(プレート)、および手術時補助工具(補助工具)の設計手法の確立、を行う。具体的には、3次元ベースの術前計画・術中支援機能や3次元シミュレーション機能に加えて、個々の患者に合ったテイラーメイド人工関節の設計可能なシステム環境を構築する。 初年度は、個体差(骨密度、骨形状、体重等)を考慮した人体モデルを30分以内に構築するシステム環境を構築し、実際の患者データに対して、適用・評価を行った。また、患者の骨モデルに合ったテイラーメイドな人工関節、プレート、補助工具を設計することで、個々の症例に合った術前計画を作成した。さらに有限要素法(FEM)による応力解析を行って、CT画像内の大腿骨や脛骨の位置を移動させ、立位状態のCT画像(仮想立位のCT画像)を作成し、複数の症例と比較検討した。同時に撮像した、荷重状態で取得したCR画像と比較することで、シミュレーション精度を高めることが可能である。 この仮想立位の状態のCT画像を用いることで、正確な3次元の人工関節の配置や人工関節の設計がより正確となる。応力解析には、CT画像から皮質骨、海面骨、髄腔の領域を抽出し、データ整形とデータ削減後、材質ごとの解析用メッシュデータに変換した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
THA(Total Hip Arthroplasty)やTKA(Total Knee Arthroplasty)に対して、必要な3次元画像群(CR, CT, MR画像)を取得して、1)正確な位置合わせ(レジストレーション)、2) 仮想立位CT画像の作成、3) 人体モデルの作成、4)骨切り操作と人工関節の配置、5) 応力シミュレーション解析プログラムへの出力やその可視化等が行える術前計画支援・術前支援システムを実現した。今後、医師であるユーザが使い易いユーザインターフェースを目指して、システム全体を改良する予定である。また、症例として、背骨の治療や歯のインプラント手術への応用も試みる。
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今後の研究の推進方策 |
我々は、CR、CT、MRI画像、人工関節、プレート、補助工具の3次元形状情報に加えて、皮膚・骨・筋肉等にセグメンテーションされたデジタルモデルをデータベース化し、正確な術前計画、人工関節・プレートの配置位置、骨切り箇所の指定、コンピュータ上での術前シミュレーション機能、手術支援ロボットへのデータ提供、必要に応じて、患者に合ったテイラーメイド人工関節、プレート、補助工具の設計・製作が可能となる一貫性のあるシステム環境(我々はこのシステム環境を次世代術前計画・術中支援システムと呼ぶ)を構築する。 本システムでは、より患者の治療に合致したテイラーメイドな人工関節、プレート、補助工具の供給が可能であり、難度が高い術式に対して、医師の負荷を削減し、同時に患者ごとに安全で最適な治療と手術が可能となる。
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次年度使用額が生じた理由 |
謝金に対して、効率よく使用出来たため、当初の予算より少なくなりました。また、外注費用が安くなったためです。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度以降の外注費用や謝金費用に使用させて頂きます。
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