研究課題
住友電気工業株式会社新領域技術研究所ライフサイエンス研究部(所在地:横浜市)の下で、波長が1700nmのデバイス・光学系を開発し、新しい世代の血管内OCTイメージング装置を作成した。本装置は、冠動脈プラークの組成(Composition) を画像化(Visualization)できることから、Compovision-OCTと名付けられた。Compovision-OCTは、OCTで測定される波長スペクトルを小帯域に分割して解析することで脂質の特徴ピークを検出し(分光OCTアルゴリズム)、冠動脈プラーク内の脂質の分布を断層画像として表示することができる。この新しい新しい血管内画像診断装置である1700nm-OCTの試作機を大学内に設置し、研究期間内に3症例の剖検標本を準備してOCT撮影と病理組織評価の実験を行なった。過去の標本の画像と合わせてn=87枚のOCT画像と対応する病理組織画像を対比して評価し、血管組織中の脂質の検出精度として感度=89%、特異度=92%の結果を得た。本結果に基づいて検討を行ない、1700nm-OCTを活用することで破綻リスクの高い冠動脈プラークを診断できる可能性がある点で有用であることを見出した。一方で、OCT画像の深達度の改善、深達度で制約された画像の提示方法、画像の見やすさや装置の使い勝手の点などが実用化に向けて課題であることも見出した。
2: おおむね順調に進展している
研究の達成度は、ヒト解剖例の冠動脈の獲得数にかかっているが、おおむね当初の予想通りの頻度で獲得できている。冠動脈標本をCompovision-OCTで観察し、病理組織像とCompovision-OCTを対比しながら、心筋梗塞の発症と関連する脂質コアを標的にアルゴリズムの調整が予定どおりに進行できている。
Compovision-OCTにより、検出できた脂質をこのOCT画像上にカラーで表示する。さらに本法を利用した脂質成分の定量的評価法や血管内の三次元画像表示についても検討する。
コンピュータ、外付けハードディスク:本研究では3600に及ぶ病理標本のデジタル写真と、それらの病理標本に1:1で対応するCompovision-OCTの画像をコンピュータ内で保管し、解析する。さらに、これらのデータを基に、Compovision-OCT画像のカラーマップや三次元再構築画像も作成する。したがって、高性能のグラフィック機能を有するコンピュータと大容量のハードディスクが必要であるが、現在使用中のものを継続して利用し、この購入を延期した。
購入を延期した高性能のグラフィック機能を有するコンピュータと大容量のハードディスク、およびCompovision-OCTシステムから解析用コンピュータへ画像データを移動させるための、CDやDVD、USBメモリーなどの記録メディアを購入する。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 9件、 オープンアクセス 6件) 学会発表 (10件) (うち招待講演 9件) 図書 (1件)
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