研究課題/領域番号 |
26350545
|
研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
根武谷 吾 北里大学, 医療衛生学部, 准教授 (00276180)
|
研究分担者 |
相馬 一亥 北里大学, 医学部, 名誉教授 (00112665)
今井 寛 三重大学, 医学部附属病院, 教授 (00184804)
新井 正康 北里大学, 医学部, 准教授 (50222724)
小池 朋孝 北里大学, 大学病院, 主任 (90523506)
岩下 義明 三重大学, 医学部附属病院, 助教 (90525396)
|
研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
|
キーワード | 電気インピーダンスCT / 高感度磁気センサ / 断層画像再構成 / 完全非接触測定 / 生体組織の導電率分布画像 |
研究実績の概要 |
肺疾患の診断にはX線CT撮影が有効であるが、X線被曝、医療費、検査混雑の問題から、無自覚の状態で積極的な X線CT撮影を受けるまでに至らない場合が多い。そこで本研究では、被験者が測定用ベルトを着衣するだけで、肺機能をモニタできるウェアラブルElectrical Impedance Tomography (EIT) 装置を開発し、臨床現場における有用性を検討した。加えて、従来のように直接皮膚に電極を付着させる必要がなく、シャツの上からでも測定できる非接触EIT測定のための基本技術を開発することを目的とする。 今年度の研究において、ウェアラブルEIT試作機を完成させた。このEITは、8-16個の電極を用いてリアルタイムで肺機能モニタできるものであり、導電性糸を用いた布電極を内蔵したゴムベルトとフレキシブル基板が一体化したものである。洗濯・滅菌処理に耐え、低コストで簡易的な測定を可能とした。開発品を実際に集中治療室(ICU)内の人工呼吸器装着患者4名へ適応し、肺機能評価における有効性を確認した。 さらに本研究では、シャツの上からでも非接触でEITを測定できる技術開発を遂行した。まず有限要素法によるシミュレーションの結果、ヒト胸部にける非接触EIT測定を実現するには、被験者の胸郭形状をできるだけ正確に測定することが必須であることがわかった。そこでフレキシブル基板から得られるセンサ情報を用いた胸郭形状推定法を提案し、プログラムを開発した。ICU内患者の胸部CT画像から得られた局所曲率を用いて自動的に推定した胸郭形状と、実際のそれを比較した結果、非常に良好な推定結果が得られることがわかった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度の研究目標は、「繊維電極付き伸縮性ウェアラブル電極ベルトの開発」と「高精度ウェアラブルEIT装置の開発」であった。開発したEITベルトは、健常者のみならず、実際の人工呼吸器装着患者においても良好なEIT測定が可能であることがわかった。しかし開発したEIT装置は目標とした64chではなく、16chまでの対応に留まった。これは、今年度開発した導電性電極付きベルトでは、最大16個の電極までしか実装できないサイズであったからである。 一方、開発したフレキシブル基板内臓EITは、16chの曲率センサを30chの長さセンサを実装することができ、EITの測定と同時に、胸郭形状を推定しうる仕様となった。胸郭推定プログラムにおいても、実際の胸部CT画像の形状とほぼ一致する性能が得られた。 しかしながら、64chのEIT装置までには空間分解能を上げることができなかったため、今後も高精度化を進める予定である。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は前年度から引き続き、EITの高精度化を進めるとともに、非接触EIT測定技術の開発を行う。これは、衣類の上からでもEITを良好に測定するための技術であり、EITの活用範囲を大幅に広げることが可能となる。 非接触EIT測定には、100kHz以上の高周波数で高感度インピーダンス測定ができる電子回路とフレキシブル基板の設計が必要である。さらに、実際の胸郭形状を正確にリアルタイム推定し、胸部有限要素モデルのモーフィングによるEIT画像再構成を行う。次年度は、これらの技術開発を中心に行い、実際のICU内患者において有効性を検討する。 EITの測定精度評価には、患者のX線CT値とEITから得られる肺密度の比較を用いる。これにより、局所的な肺機能評価の有効性を評価する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、初年度に予定していた研究成果まで十分に至らず、成果発表件数が少なくなったことから次年度使用額が生じた。
|
次年度使用額の使用計画 |
次年度は、さらに成果を出すことで、発表件数を増やす計画である。
|