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2015 年度 実施状況報告書

ナノ粒子の音響化学活性化によるアポトーシス誘導を利用した新規がん治療法の開発

研究課題

研究課題/領域番号 26350549
研究機関横浜薬科大学

研究代表者

岩瀬 由未子  横浜薬科大学, 薬学部, 講師 (00521882)

研究分担者 弓田 長彦  横浜薬科大学, 薬学部, 教授 (40191481)
定本 清美  横浜薬科大学, 薬学部, 教授 (00297673)
梅村 晋一郎  東北大学, その他の研究科, 教授 (20402787)
研究期間 (年度) 2014-04-01 – 2017-03-31
キーワードapoptosis / 音響科学的活性化 / 活性酸素 / 超音波 / ナノ粒子
研究実績の概要

がん細胞自身はアポトーシスを起こしやすいが、生体内では増殖シグナル伝達の活性化やアポトーシス誘導能の消失あるいは減弱により異常増殖が起きると考えられている。そこで、がん細胞に選択的にアポトーシスを誘発させることが可能となればがん細胞の自然消滅を促し、正常細胞への影響が少ないがん治療につながると期待できる。強度の強い超音波を照射するとアポトーシスが誘発されることが知られている。超音波は、生体内の深部組織まで到達させることができる外部エネルギーでありながら、その強度によっては生体に影響を与えない性質をもつ。超音波照射によるアポトーシス誘導は超音波照射により発生する気泡が圧縮し崩壊する際に生じる物理的・化学的作用による。そこで、生体に影響を与えない強度の超音波照射により音響化学的に活性化されアポトーシスを誘発する薬剤の併用による腫瘍選択的がん治療の開発を目指している。これまで、フラーレン誘導体を用いて超音波との併用により殺細胞効果の発現または増強を示す薬物のスクリーニングを行っている。この結果、水溶性を有するpyrrolidine tris-acid fullerene (PTF) について殺細胞効果の発現を確認した。そこで、この超音波およびPTFの併用による殺細胞効果にアポトーシスが関与するかについて検討した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

超音波単独またはPTFとの併用による殺細胞効果がアポトーシスによるものかについて、ヒト前骨髄球性白血病(HL-60)細胞を用いて確認した。アポトーシスの評価はアポトーシス誘発時特有の現象である形態学的変化およびDNAの断片化がおきているかについて検討した。まず、未処置群、PTF単独処置群、超音波単独処置群およびPTFと超音波併用群の4群で処置後の生存細胞数を確認したところ、PTFと超音波併用群で顕著な生細胞数の減少が確認された。続いて、細胞の形態学的変化について位相差顕微鏡を用いて確認した。この際、トリパンブルー染色により生細胞、死細胞を区別した。PTFと超音波併用群でのみ明らかな形態学的変化が確認された。さらに、アポトーシスの条件の1つであるDNAのヌクレオソーム単位での断片化についてもアガロース電気泳動法を用いて検討した。この結果、DNA断片化がPTFと超音波併用群で確認された。これらのことから、PTFと超音波併用によりアポトーシスが生じている可能性が示唆された。

今後の研究の推進方策

超音波とPTFの併用によりアポトーシス特有の細胞の形態学的変化およびDNA断片化が確認され、アポトーシスがおきていることが示唆されている。さらに本年度は1. 細胞膜の構造変化 2. クロマチン凝集 3. Caspase-3の活性化4. PARP-1の検出 5. ミトコンドリアの膜電位変化等を調べることによりアポトーシスの同定並びにアポトーシス経路同定予定である。細胞膜の構造変化は膜透過性を有しない蛍光標識試薬を用い、アネキシンVが細胞膜の内側にあるフォスファチジルセリンと結合する性質を、7-Amino-Actinomycin DがDNAと結合する性質を利用して評価する。クロマチン凝集についてはHoechst 33342を用いて蛍光染色を行い蛍光顕微鏡で観察する。Caspase-3の活性化についてAcetyl-Asp-Glu-Val-Asp-7-amido-4-trifluoromethyl-coumarin(DEVD-AFC)を用い、caspase-3活性化により切断される7-amino-4-trifluoromethyl coumarinの蛍光を測定する。PARP-1はPARP-1 (N-term ZF1) Antibodyを用いウェスタンブロットにより確認する。ミトコンドリアの膜電位変化は、5, 5', 6, 6'-Tetrachloro-1, 1', 3, 3'-tetraethylbenzimidazolylcarbocyanine iodideを用い、試薬がミトコンドリアの脂質二重膜に取り込まれ,膜電位に応じて可逆的に変化する蛍光を測定する。加えて、アポトーシス経路同定のためイニシエーター・カスパーゼであるcaspase-8やcaspase-9の活性についても検討する。

  • 研究成果

    (5件)

すべて 2015

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 2件) 学会発表 (2件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] Antitumor effect of sonodynamically activated pyrrolidine tris-acid fullerene2015

    • 著者名/発表者名
      Yumiko Iwase, Koji Nishi, Junya Fujimori, Toshio Fukai, Nagahiko Yumita, Toshihiko Ikeda, Fu-shin Chen, Yasunori Momose, Shin-ichiro Umemura
    • 雑誌名

      Japanese Journal of Applied Physics

      巻: 54 ページ: 07HD05

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Sonodynamically-induced cytotoxicity by rose bengal derivative and microbubbles in isolated sarcoma 180 cells2015

    • 著者名/発表者名
      Nami Sugita, Mami Hosokawa, Naoki Sunaga, Yumiko Iwase, Nagahiko Yumita,
    • 雑誌名

      Japanese Journal of Applied Physics

      巻: 54 ページ: 07HF16

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [学会発表] Antitumor effect of sonodynamically activated pyrrolidine tris-acid fullerene2015

    • 著者名/発表者名
      Yumiko Iwase, Koji Nishi, Junya Fujimori, Toshio Fukai, Nagahiko Yumita, Toshihiko Ikeda, Fu-shin Chen, Yasunori Momose, Shin-ichiro Umemura
    • 学会等名
      第36回 超音波エレクトロニクスの基礎と応用に関するシンポジウム(USE2015)
    • 発表場所
      つくば国際会館(エポカルつくば)
    • 年月日
      2015-11-05 – 2015-11-07
  • [学会発表] Photodynamiclly Induced Apoptosis by Enoxacin in Ultraviolet A Exposed HL-60 Cells2015

    • 著者名/発表者名
      Yumiko Iwase, Nagahiko Yumita, Kiyomi Sadamoto, Koji Nishi, Shin-ichiro Umemura
    • 学会等名
      第74回 日本癌学会学術総会
    • 発表場所
      名古屋(名古屋国際会議場)
    • 年月日
      2015-10-08 – 2015-10-10
  • [図書] 基礎からの薬物動態学2015

    • 著者名/発表者名
      池田俊彦、弓田長彦、奥平和穂、西弘二、岩瀬由未子、佐古兼一
    • 総ページ数
      141
    • 出版者
      株式会社みみずく舎

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公開日: 2017-01-06  

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