研究課題/領域番号 |
26350550
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研究機関 | 横浜薬科大学 |
研究代表者 |
深井 俊夫 横浜薬科大学, 薬学部, 教授 (10057755)
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研究分担者 |
弓田 長彦 横浜薬科大学, 薬学部, 教授 (40191481)
岩瀬 由未子 横浜薬科大学, 薬学部, 講師 (00521882)
梅村 晋一郎 東北大学, その他の研究科, 教授 (20402787)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | カーボンナノチューブ / 音響化学療法 / 超音波 / 活性酸素種 / アポトーシス / 水酸化カーボンナノチューブ |
研究実績の概要 |
がんの治療は、外科手術、放射線治療、化学療法により行なわれてきたが、いずれも腫瘍選択性の観点において理想的と言えるものではなく、これらを腫瘍選択性に優れる新療法の実現が望まれている。我々は、これまでの基礎研究により、ナノ粒子であるカーボンナノチューブが超音波照射により顕著な抗腫瘍効果を発生することを発見した。上記薬物の薬物単独による毒性は、従来の抗癌剤に比べて無視できるほど小さく、また、超音波の集束性により超音波焦域外における音響化学効果発生を原理的にさらに小さく抑えることができるので、超音波を集束した患部以外における副作用が実質的に無視できる治療の実現を期待することができる。また、機能性フラーレンおよび機能性カーボンナノチューブが、光化学的励起し活性酸素を産生数ことが報告されているそこで、本研究では、従来の治療法の技術的な限界を克服することを目的に、遠隔作用力を持つ外部エネルギーである超音波と音響化学的に抗腫瘍活性化する水溶性の機能性カーボンナノチューブを組み合わせた新たな腫瘍ターゲティングシステムの開発を行うことを目的とした。本年度は、超音波単独、または機能性カーボンナノチューブとの併用による単離腫瘍細胞に対する殺細胞作用の増強を確認した。さらに、活性酸素種消去剤添加の超音波と機能性カーボンナノチューブ併用による殺細胞作用に対する影響を検討したところ、一重項酸素の消去剤であるヒスチジンの添加が、超音波とカーボンナノチューブ併用処置の殺細胞効果を著しく抑制することを認め、その殺細胞作用機序においける一重項酸素の関与を推定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでに、超音波単独、または機能性カーボンナノチューブとの併用による単離腫瘍細胞に対する殺細胞作用をトリパンブルー排除法によって確認した。超音波と併用することにより殺細胞効果が発現、または増強されるナノ粒子をスクリーニングした結果、水酸化カーボンナノチューブで優れた増強効果を認めた。超音波の作用には物理作用と、キャビテ-ションを介して発生する活性酸素種による化学作用とがあると推定されるため、活性酸素種消去剤添加の超音波と水酸化カーボンナノチューブ併用による殺細胞作用に対する影響を検討した。OHラジカルの消去剤であるマンニトールとスパーオキサイドラジカルの消去剤であるSODは併用による殺細胞効果に対し有意な抑制作用を示さなかったのに対し、一重項酸素の消去剤であるヒスチジンの添加が、超音波とカーボンナノチューブ、または水酸化カーボンナノチューブ併用処置の殺細胞効果を著しく抑制することを認めた。以上の所見より超音波と水酸化カーボンナノチューブ併用による殺細胞作用機序において一重項酸素の関与を確認した。
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今後の研究の推進方策 |
トリパンブルー排除法による殺細胞効果の判定は、細胞膜の色素透過能に基づくものであったが、本年度は、Resazurinが生細胞内で還元され,蛍光性のresorufinとなる反応を利用したCellQuanti-Blueアッセイ法とミトコンドリア内の酵素活性に基づくXTTアッセイ法を用いて殺細胞効果の判定を行う。また、どの周期の細胞が音響化学作用に増感性が高いかを判定するために,レドックス色素を細胞に取り込ませ,細胞内の酸化・還元状態が変化に基づく色調の変化を指標として細胞周期をモニタリングする.さらにこれらの殺細胞作用作用の判定法において、活性酸素種に特異的な消去剤による阻害効果により性酸素種の殺細胞作用における寄与を確認する。超音波照射による水溶液中での活性酸素生成を電子スピン共鳴(ESR)により測定する。活性酸素に特異的なスピントラップ剤による生成量の測定と消去剤による阻害効果により一重項酸素の関与を推定する。
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