研究課題/領域番号 |
26350552
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研究機関 | 甲南大学 |
研究代表者 |
藤井 敏司 甲南大学, フロンティアサイエンス学部, 教授 (80271518)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | アルツハイマー病 / アミロイドβ / 電気化学 / ペプチド / 修飾電極 / 測定法 |
研究実績の概要 |
本研究は、現状で根治薬のないアルツハイマー型認知症(AD)のリスクを早期に診断するための検出系を開発することを目的としている。本年度は、血漿中に含まれる夾雑物質がADのバイオマーカーと考えられるアミロイドβ(Aβ)の電気化学的検出に与える影響と対策、および検出用電極の耐久性向上に関する検討を行った。 血漿中の夾雑物質の例としてアスコルビン酸の検出に与える影響を検討した。血漿中には約50μMのアスコルビン酸が含まれており、Aβに配位した銅イオンの酸化還元電流に影響を及ぼすことが考えられる。そこで、電極表面を様々な長さのアルキルチオールで被覆し、アスコルビン酸の酸化還元反応を抑えられるかどうかを検討したところ、C12以上の長鎖のアルキルチオールでほぼアスコルビン酸の直接酸化還元を抑えることができた。また、測定の際、本補助金により購入した電気化学測定装置でSquare Wave Voltammetry (SWV) を行ったところ、従来のCyclic Voltammetryよりも感度を一桁向上することができた。また、アスコルビン酸共存の効果として、Aβ検出の感度が若干向上することもわかった。 検出用電極の耐久性向上に関しては、感度向上のため金ナノ粒子(AuNP)で修飾した電極の物理的強度向上について検討した。AuNP間のリンカー分子として、アルキルジチオールによりAuNPをつなぎ合わせた電極と、リンカー分子なしの電極で繰り返し測定を行ったところ、3,4回の繰り返し測定では大きな差が見られず、修飾の効果は顕著には観測されなかった。今後、繰り返し回数を重ねて、さらに検討する必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
夾雑物質の影響の除去については、ほぼ当初の計画通りに進捗しているが、電極の耐久性向上と感度向上については、実験を担当していた研究生の大学院入学試験の結果もあって(1次不合格。2次(2月末)で合格)、当初の予定よりは若干の遅れがある。
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今後の研究の推進方策 |
SWV法の採用により、従来より感度は1桁向上したものの、目的とする血漿中のAβ濃度にはあと、1~2桁不足している。本年度は、電極そのものの修飾によるさらなる感度向上と、凝集条件の検討(現在の実験条件では実試料の約1%しか観測できていないことがわかっている)により、さらなる感度向上を目指す。実用感度に達すれば、測定試料を実際の血漿とし、課題のあぶりだしなどを行いながら、実用に耐えうる検出系の構築を図る。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究生1名と4年生1名の2名体制で研究を行ったが、研究生の9月の大学院入試が不調に終わり、2月の入試に向けての学業優先となり、実験の進行ペースが落ちたため。
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次年度使用額の使用計画 |
最終年度は高額なヒト血漿などを用いて測定を実施する予定であるので、次年度繰り越し金の大部分は物品費として使用予定である。
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