高齢化社会の進行に伴いアルツハイマー病(AD)患者数は増え続ける一方であるが、現在根治薬などもなく、大きな社会問題となっている。ADのバイオマーカーとして血漿中のアミロイドβペプチド(Aβ)量の有効性が指摘され、認知症状発症の数年前の変化を捉えることで、早期にADを診断できる可能性がある。本研究では、できるだけ被験者の精神的、肉体的、経済的負担を軽減すべく、健康診断の1項目として利用可能なできるような血漿中のAβ濃度を簡便・迅速・安価に測定できる方法の開発を目指した。 検出系には、装置も安価で高感度で簡便な測定が期待できる電気化学測定法を利用することとした。我々が開発したAβの凝集を促進するペプチド(AFPP)を電極上に固定した修飾電極を作製しAβの検出に用いた。AFPP修飾電極上にAβを集積させ、銅2価イオンを添加後、電気化学測定を行うことで試料中のAβを定量したところ、検出限界5 nMで検出することが可能となった。AFPP修飾電極の表面は、AFPPの他にドデカンチオールで被覆することで、試料中の酸化還元活性な夾雑物質の影響をおさえることが可能であった。また、このAFPP修飾電極は洗浄により初期化可能で、繰り返し利用することで1回あたりの費用を抑えることが出来た。1回の測定に要する時間は洗浄まで含めて1時間以内に行うことが出来た。 しかし、血漿中のAβ量を計測するにはあと1~2桁の感度向上が必要である。現在、更なる高感度化を目指して研究を進めている。
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