研究課題/領域番号 |
26350555
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研究機関 | 岡山理科大学 |
研究代表者 |
石田 弘樹 岡山理科大学, 理学部, 准教授 (50413761)
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研究分担者 |
安東 嗣修 富山大学, 大学院医学薬学研究部(薬学), 准教授 (50333498)
八賀 正司 富山高等専門学校, 商船学科, 教授 (80123305)
秋口 俊輔 富山高等専門学校, 電子情報工学科, 准教授 (50462130)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | レーザードップラー / 血流 / 新生血管 / 癌 |
研究実績の概要 |
身体のなかで癌細胞が生まれると癌細胞の急速な増殖に伴い血管新生が起こる.腫瘍魂に網目状に形成された新生血管ネットワークは,癌細胞に酸素や栄養を供給する役割を担う.本研究では,レーザーを利用した新規の血流計を開発し,発癌に伴う新生血管を可視化することで癌を早期発見することを目的に研究を進めてきた. 研究を開始し2年目(研究期間3年)にあたる本年度は,昨年度に開発した血流計を用いてマウスを使った動物実験を主に行った.その結果,乳癌の成長過程に起こる血管ネットワークの形成過程を新規に開発した血管血流イメージング装置により鮮明な画像として記録することに初めて成功した.癌細胞は,初期の段階(癌細胞移植後1週間程度)で周囲の血管の血流を巧みに制御し,血管ネットワークは腫瘍に効率良く血液が送られるように形成された.本研究成果は,Applied Physics Lettersに掲載された. 従来のドップラー血流計では,身体の深部にある血管の計測は難しかった.レーザー光が皮膚の組織で散乱されて生体内で光のコヒーレント性が損なわれてしまうことが主な要因であった.そこで本研究では,皮膚からの散乱光をカットし,コヒーレント性を保った光を選択的に受光できる光学システムを開発した.また,レーザー光が生体内で作り出すスペックル模様に似た干渉模様をはじめて観測し,この干渉模様を利用することで身体の深部にある血管においても血流速を計測できることを初めて明らかにした.本研究成果は,学術論文に投稿中である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の目的は,発癌に伴う新生血管ネットワークの形成過程を明らかにすることであり,研究期間一年目では,新規の血管血流イメージング装置の作製を行い,必要な仕様を満足する血流計を開発することに成功している.二年目である本年度は,乳癌を持つ動物モデルを作成し,腫瘍周囲の細血管のイメージングと癌の成長にともなう血管ネットワークの形成過程を明らかにすることができた.よって,研究目的はおおむね達成できたと言える.
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今後の研究の推進方策 |
開発した新規の血管血流イメージング装置は,血流速の情報をもとに血管を可視化している.測定した血流速の測定精度については曖昧な部分が残っている.本装置は,身体の内部でレーザー光を交差させたときに発生するスペックル模様に似た干渉模様を利用して血流速を計測しているが,干渉模様のコントラストを代表長さとして定量的に評価するための理論的な解釈ができていない.研究期間の最終年度である本年度は,血流速の測定精度を明らかにするため理論と実験の両面からアプローチを試みる計画である.
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次年度使用額が生じた理由 |
実験補助に学生アルバイトを計画していたが,研究代表者(石田),および研究分担者(安東,八賀,秋口)のみで実験を実施することができた.アルバイトが不要になった理由は,計測システムを自動化したことにより実験補助がいらなくなったため.また,論文の登録料および学会への参加旅費を計画していたが所属機関からの研究費から支出した.
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次年度使用額の使用計画 |
次年度に繰り越された研究費は,主に物品費に使用する.光検出の感度を向上させるため電子回路基板を新たに作製する.また,コンピューターによる血流解析の時間を短縮させるため並列計算用のプロセッサであるグラフィックプロセッシングユニット(GPU)を購入する.
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