研究課題
従来、SPECT撮像において、ヒトのような大きな被写体の局所領域をピンホールコリメータなどで拡大撮像した場合、データ欠損(トランケーション)が生じるため、正しい画像が得られなかった。これまでの研究で、トランケーションを許す画像再構成法が開発され、また、ピンホールコリメータの感度不足はマルチピンホールコリメータによって改善された。本研究では、局所拡大SPECT撮像の実用化を目指して、定量性、解像度、視野、画像歪を改善する。昨年度の検討および評価実験の結果、本検出器が高精細光電子増倍管とフルデジタル回路から構成されていることで、ノイズが抑制され、高い固有空間分解能が実現できていることを確認できた。また、画像歪もほとんどないことを確認することができた。これによって、本年度計画していた画像歪補正を回避することができた。本年度は、局所領域再構成画像の定量性確保を目指して、被写体でのガンマ線の吸収の影響を補正する処理を局所画像再構成アルゴリズムに組み込んだ。低解像度の大視野検出器でトランケーションないデータを収集し、再構成画像後、被写体の輪郭を抽出、被写体内部に吸収係数を与えた吸収マップを作成、逐次近似法の投影過程で吸収マップを参照することで、ガンマ線の吸収の影響を補正した。ファントム実験で評価した結果、吸収の影響が補正され、局所領域画像の定量性が改善された。頭部程度の大きさの被写体ではガンマ線の吸収の影響があり、吸収補正は定量画像を得るためには有効であることが確認できた。実用化に向けた撮像システムの最適化が進んだ。
3: やや遅れている
本年度の研究目的は吸収補正・散乱線補正を含む局所画像再構成アルゴリズムの開発、および画像歪補正であった。画像歪に関しては昨年度の評価実験で歪がほとんどないことが確認できた。また、吸収補正に関しては、局所画像再構成アルゴリズムに補正処理を組み込んで、吸収の影響を改善することができた。しかし、散乱線補正に関してはモンテカルロシミュレーションベースの手法での実現を試みたが、予想以上にプログラムの作成に時間がかかり、本年度内にプログラムが完成しなかった。以上、本研究はやや遅れている。
次年度は、本年度の積み残した課題の散乱線補正の組み込みを引き続き行うが、当初はモンテカルロシミュレーションベースの手法によって精度良く行うことが考えていたが、実用上十分な精度が得られれば、簡単な手法で、処理時間が速い方が良い。そこで、コンプトン散乱を1回だけ行って散乱線分布を推定するSingle Scatter法や、画像再構成前の投影データに対して散乱線補正するTriple Energy Window(TEW)法も試みる。簡単で処理時間も速く、実用上十分な精度の実用的な手法を検討することで、本年度の積み残しの散乱線補正処理を効率良く開発する。また、散乱線補正やコリメータ開口補正を組み込んだ画像再構成は計算に時間がかかるため、最新の高性能コンピュータを導入し、研究を効率よく進める。
本年度は、散乱線補正手法を含む局所画像再構成アルゴリズムの開発および評価を計画しており、モンテカルロシミュレーションベースの散乱線補正は計算に時間がかかるので、最新の高性能コンピュータを導入する予定であった。しかし、予想以上にプログラムの作成に時間がかかり、プログラムが本年度中に完成しなかった。そこで、次年度に最新の高性能コンピュータを導入することにした。そのため、コンピュータ購入予定額に相当する次年度使用額が生じた。
本年度、最新高性能コンピュータ購入予定額に相当する614,954円の次年度使用額が生じた。次年度、これと平成28年度交付額1,100,000円を合わせて、1,714,954円が使用可能である。次年度は本年度購入予定だった最新高性能コンピュータ400,000円/台×2台=800,000円、実験に必要な放射性薬剤100,000円、実験用動物10,000円を購入する。これに旅費600,000円、その他200,000円を合わせて計1,710,000円を使用予定とする。
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電子情報通信学会技術報告
巻: 115 ページ: 121-126
Proceedings of 2015 10th Asian Control Conference
巻: CD-ROM ページ: 1-6
10.1109/ASCC.2015.7244545