研究課題/領域番号 |
26350560
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
長村 文孝 東京大学, 医科学研究所, 教授 (90282491)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | レギュラトリーサイエンス / 抗がん剤 / 承認審査 / 開発環境 |
研究実績の概要 |
我が国では医薬品の承認・上市が欧米に比べて遅れがちであるドラッグラグが、特に生存に関わる抗がん剤では大きな問題となっている。原因として、非臨床試験あるいは治験の開発環境、治験実施期間の長さ、審査時間の長さが指摘されている。審査時間は短縮されているものの、分子標的療法を中心に依然時間を要している。本研究では、治験及び取り巻く医療環境と承認審査がどのようにお互いに関連しているのかを解明し、より適切で迅速な承認・上市に結びつける取り組みも含まれている。そして、審査情報が多く公開されている米国と本邦の審査状況を審査資料となった治験および医療環境との関連を検討し、治験の留意点、医療環境の差異をどのように治験・資料に反映するかをとりまとめ、より早期の承認に結びつけることを目的としている。 研究は3ヶ年を予定しており、平成26年度は日米の2001年から2014年までに承認された抗がん剤のうち、本研究目的に合致した薬剤の絞り込みと適応や主要試験をとりまとめたデータベースの作成と添付文書あるいは審査資料等の必要なデータの収集を行うこととし、平成27年度に規制情報等の情報収集とデータベースの作成を終了し、平成28年度にデータベース及び収集資料の解析を行い、抗がん剤全体、あるいは疾患別・作用機序別に日米の差違を検討し、本邦における抗がん剤開発の障害となっている要素について絞り込み、特定を行う予定としている。平成26年度は、研究の進行により解析範囲を広げる可能性があるため、日米の全承認抗がん剤を対象として抗がん剤のリストアップを行い、適応の確認や添付文書の収集を行い、データベースの基本構造を完成させた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成26年度は、日米で承認された抗がん剤を対象として承認日、承認の適応症を基本骨格とするデータベースを作成した。元とした資料は、日本は医薬品医療機器総合機構のHPであり、米国はFDA (Food and Drug Administration)のDrugs@FDAとして、これらに掲載されていない資料は、製薬企業のHP等から入手した。このデータベースには、一部pivotal study等の情報を入力し、平成27年度に完成する予定である。全部で222品目であり、日米両国での承認は121品目、米国のみでの承認は67品目、日本のみでの承認は34品目であった。今回の研究では分子標的療法の対応や、最近の規制当局の対応を検討し、また、補助療法は医療環境、とりわけ臨床現場の状況に左右されやすいことから、直接的な区抗腫瘍効果を有し、2001年4月から2014年3月までに承認された抗がん剤に絞り込んだ。なお、どちらか一方の国で2001年4月以前に承認された抗がん剤は除外した。 絞り込んだ後は、日米両国で承認された抗がん剤は50品目、米国のみ承認は20品目、日本のみでの承認は5品目であった。この結果から、米国の承認が2001年以降に絞っても早く、また多くの種類が承認されていることがわかり、本研究を継続・完遂する意義があるものと考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
平成27年度は、平成26年度に引き続き情報の収集とデータベースの作成を進め、データベースについては必要項目の入力を完了する。情報の収集は長村研究代表者が、既にデータベースに入力済みの抗がん剤であっても、審査資料あるいは学会・論文発表で新たな情報が得られることがあるので繰り返し情報の確認を行う。データベースの作成は、平成27年度がもっとも量的に多くなることを想定しているが、データベース構成項目を確定し、入力内容の検討とデータベースの管理は長村研究代表者が行う。また、引き続き日米の情報については学会参加による情報収集に加え、現地で規制当局の審査官と意見交換を行い、本研究における方向性について確認を行いながら進める。 平成28年度:情報の収集データベースの作成は、前年までにほぼ終了しているが学会あるいは論文による発表をする可能性があるので引き続き情報の収集に努め、情報の漏れが無いようにする。データは第二四半期で固定する。情報のとりまとめと考察は平成28年度当初より取り組み、作成したデータベースを基に、抗がん剤全体、あるいは疾患別・作用機序別に日米の差違を検討し、本邦における抗がん剤開発の障害となっている要素について絞り込み、特定を行う。特定ができた段階で学会発表あるいは論文化し、その後にホーム・ページ等で公開する。最終的には障害となっている要素を克服するためにはどのように取り組むべきなのか提言の形でとりまとめる。
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次年度使用額が生じた理由 |
2015年5月に行なわれる米国臨床腫瘍学会参加の費用確保をした。
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次年度使用額の使用計画 |
より実情に踏み込んだ研究につなげる為、米国臨床腫瘍学会に参加し、今回の対象となる抗がん剤の評価の実情と資料収集、及び米国FDA審査官等の専門家との情報交換を行う。
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