研究課題
我々は,2006年7月から2016年4月までに総計100症例への適用を通じて,大動脈外科手術に求められるナビゲーションシステムの使用法や要求精度について検討してきた.人工血管置換術は時間的な制約が大きく,術者が術中の手技に集中する必要がある.ナビゲーションシステムの適用においては,簡易な操作性と必要なタイミングで的確な情報を即座に呈示する性能が求められる.今般我々は,運用に要する時間を削減し,使用経験に乏しい術者が操作してもナビゲーションをすぐに利用できるようにシステムを改良した.臨床試験の実施にあたっては,東京女子医科大学病院倫理委員会の承認を受け(承認番号160402),UMIN-CTRに登録した(UMIN000021508).新システムの臨床応用を2016年6月に開始し,2017年1月までに6症例が施行された.患者の体位決定後,消毒前に患者と事前に取得した画像データとのレジストレーションを行い,術者の目標血管へのアプローチ法を決定した.皮膚切開及び癒着部の剥離を経て,術野を確保した後,目標血管周辺に存在する特徴点に基づいて患者と画像とのずれを補正し,肋間動脈を同定した.ナビゲーションは全例でスムーズに運用できた.ナビゲーションに要した時間は,皮膚切開前のアプローチ方法の決定に9.8±1.7分,術野における血管同定に6.4±1.5分であった.皮膚切開前のナビゲーションでは左胸から目標血管へ向かう方向のアプローチを画像で確認するために十分な精度が得られ,剥離後も肋間動脈の目標血管の位置及び走行を確認できた.新規ナビゲーションシステムは,セッティングも容易となり,現在良好に運用できている.今後は,新システムを解剖学的に特異的な症例にも適用し,ナビゲーションが広く使用できることを示していきたい.
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