研究課題/領域番号 |
26350563
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研究機関 | 群馬大学 |
研究代表者 |
五味 暁憲 群馬大学, 医学(系)研究科(研究院), 研究員 (10325798)
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研究分担者 |
横尾 聡 群馬大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (00322206)
神戸 智幸 群馬大学, 医学部附属病院, 医員 (90649493)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 開鼻声値 / 鼻咽腔閉鎖不全 / 構音障害 / 嚥下障害 / 高齢者 |
研究実績の概要 |
本研究は,高齢者の鼻咽腔閉鎖機能が客観的かつ明確に評価できるようになることを目標に,健常高齢者の開鼻声値(nasalance score,NS)を計測し,開鼻声値の基準値を設定することを目指すものである。 これまでのNSの報告は若年成人が主であり,若年者と高齢者は体力・筋力など年齢差があると予想できることから、鼻咽腔閉鎖機能も差があると考え、年齢を考慮したNS基準値を設定すべきと考えている。嚥下障害の原因に鼻咽腔閉鎖不全が挙げられる。被験者のNSを測定するとともに、被験者の嚥下リスクを同時に調査し、その相関性を明らかにすることで、NSによる嚥下障害のスクリーニングが可能となるのではないかと考える。 設定した基準値を用いて,高齢者の鼻咽腔閉鎖機能を評価するとともに,鼻咽腔閉鎖不全症に伴う誤嚥リスク,構音障害のリスクとの相関を明らかにし,高齢者の構音障害のみならず嚥下障害,誤嚥性肺炎の予防やリハビリテーションのための指標となるようにしたいと考えている。 高齢者利用施設に本研究について説明し,調査の許可があれば,利用者に説明書を配布,同意の得られた利用者を検査する。被験者にナゾメーターのヘッドセットマイクを装着し,母音,子音,検査文を発音してもらい,NSを得る。発話する音は緒方ら,五味らの報告に基づき,母音/a//i//u//e//o/,子音/p//b//t//s//dz/,文章「よういはおおい」(低圧文),「きつつきがきをつつく」(高圧文)である。検査は1名につき3回行い,その平均値を被験者のNSとする。各被験者のデータを解析し,各音,文の平均NSを求める.検定は多重比較検定を用いる。年齢ごとの音,文のNSを導き出す.性差についても検討する。基準値を設定し考察を加え,学会・誌上発表、講演を通して臨床応用を目指す。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
被験者のなる高齢者の年齢層は,幅広く考えているが,万遍なく検査できている。一方,NSは地域差があり得ることが予備調査でわかっているため,出身県を伺いながら行っており,比較的精密なデータを得られていると考えている。ただ、精密度を向上させることから被験者数が想像以上に集まらず、次年度からスクリーニングの精度を上げる工夫を加えたい。 データは健常者のみならず,鼻咽腔閉鎖不全に伴う嚥下障害,構音障害患者を対象とした検査を併せて行っている。患者群のデータは少ないが,鼻咽腔閉鎖不全を改善する目的で作製するパラタルリフト,スピーチエイドの効果を評価する際に,健常高齢者のデータが参考になっている。本研究データは実用的であることがわかりつつある。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに引き続き,調査の対象は,先天異常,口腔疾患,脳血管障害、神経筋疾患を有しない60歳から89歳までの男女としたい.高齢者利用施設などに出向き,調査の趣旨を説明し,許可のあった利用者を対象に入れる。その際に出身県を伺うこと,嚥下障害の有無のスクリーニングを行うことを新たに加える。その理由は,健常被験者を選択できるようにするとともに、健常者として扱えなかった被験者のデータもNSと嚥下障害のリスクとの間の相関性を確認する目的で有効なものとするためである。
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次年度使用額が生じた理由 |
調査や学会発表に必要な旅費を抑制したことが大きい。また、調査時に被験者に渡す文房具の数量が、調査件数が伸びてないことから、消費に至っていないこともある。
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次年度使用額の使用計画 |
次年度は今回の調査件数の伸び悩みを踏まえ、調査地域を拡大する計画である。そのための交通費・宿泊費が必要となってくるであろう。また、嚥下障害のスクリーニングをした上でサンプリングをすることにしたいため、そのための機器の購入費用が必要であり、繰り越した助成金は有用となる。
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