研究課題
嚥下・構音障害のリハビリテーションに鼻咽腔閉鎖機能(VPC)評価は重要である。その方法として,われわれは開鼻声値測定による評価に着目した。開鼻声値(NS)は,鼻腔及び口腔からの音響エネルギーの総和に対する鼻腔からの音響エネルギーの比である。鼻咽腔閉鎖不全(VPI)に伴う開鼻声が生じると,鼻腔からのエネルギーが増すため,NSは高値となる。NSを用いた評価は小児口蓋裂患者に用いられることが多く、評価基準も発表されているが,嚥下・構音障害の有病率が高い高齢者のNSの正常値やVPIと判断する臨界値は不詳である。本研究は、NSを用いた高齢者のVPCの客観的評価を可能にするためのpilot studyである。健常高齢者9名(男4名,女5名,平均年齢72.0歳)のNSをKayPENTAX社製 NasometerⅡ6450にて計測した。音声サンプルは母音/a//i//u//e//o/,子音/p//b//t//s//dz/,低圧文「よういはおおい」,高圧文「きつつきがきをつつく」とし,各サンプルの平均NSおよび最大NSを分析した.主な音声サンプルの平均NSの平均値,中央値,標準偏差は,/a/25.5,25.5,7.5,/i/41.8,38.5,18.1,低圧文23.5,20.0,13.1,高圧文23.2,22.0,10.7であった。また低圧文の最大NSは52.3,50.5,12.8であり,高圧文は70.5,72.0,17.7であった。過去の報告と比較すると,単音,子音のサンプルでは若年者と差がみられないが,高圧文,低圧文の最大NSが若年者より高い傾向が認められた。平均NSが低値でも最大NSが高い場合は,軽度VPIと判定されるため,加齢によるVPCの低下が伺える一方,NSでVPC低下を指摘できることが考えられた。今後も本研究を継続,データの増加を図り,評価方法を確立していきたいと考えている。
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