研究実績の概要 |
研究期間の最終年度にあたる今年度は、昨年度行った実験の被検者数を増やし、受動ステッピングの立脚期および遊脚期中の総脛骨神経刺激の印加がヒラメ筋脊髄運動ニューロンを抑制する脊髄相反性抑制(Ia抑制)に与える効果について、同一被検者間の比較を行った。また、これまでの成果を国際学会で発表するとともに、国際の学術誌へ投稿を行った。成果の概要は以下の通りである。 被検者は健常成人男性10名あった。受動ステッピングを免荷式受動歩行補助装置(Lokomat®, Hocoma AG, Switzerland)により30分間行った。介入の前後において、総脛骨神経からヒラメ筋脊髄運動ニューロンへのIa抑制の抑制量を、ヒラメ筋H反射に総脛骨神経の条件刺激を与える手法により評価した。 その結果、受動ステッピング中の総脛骨神経電気刺激がヒラメ筋のIa抑制に与える影響には、位相依存性があることがわかった。分散分析を電気刺激の位相(立脚期、遊脚期)と介入後の時間(介入前、介入後5分、15分、30分)の2要因について行ったところ、有意な交互作用が認められた(F(3,27)=8.430, P<0.01)。その後の検定において、Dunnett法により介入前と介入後の対比較を行ったところ、遊脚期においては介入5分後、15分後に抑制量の有意な増大が認められた(いずれもP<0.01)。一方、立脚期においては介入5分後に抑制量の有意な減少が認められた(P<0.05)。 本研究により、受動ステッピング中の総脛骨神経電気刺激がヒラメ筋のIa抑制に与える影響には位相依存性があり、遊脚期中の刺激は抑制を強めるが、立脚期中の刺激は抑制を弱めることが明らかになった。本研究の結果は、周期的な運動中にはどのタイミングで末梢神経電気刺激を与えるかが、脊髄の可塑性を意図した方向に誘導する上で重要なことを示唆するものである。
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