研究実績の概要 |
平成27年度は,以下の4点を行った. 1)実験に使用する尺度の選定見直し:前年度に決定したRumination-refletion Questionnaire(RRQ),自尊感情尺度日本版のほか,性格特性評価としてNEO-FFIを使用することを決定した. 2)内省プログラムの内容と頻度の決定:内省用プログラムとして検討していたWellness Recovery Action Plan(WRAP)は教育研究で用いられているものの,その科学的根拠が十分ではない点と,精神疾患患者に対する使用が基準であるため,中長期的な介入を前提とされている点が課題となった.実験上は,中長期的な介入では実験条件以外のバイアスが多数含まれてしまう点が懸念されたため,WRAPと同様に内省を促進する目的で開発され,プログラムの頻度が調整可能な複数の教育心理プログラムを参考に,内省プログラムを試作した.具体的には3回(週1回)のプログラムで,他者との関与を通した自己理解のフェーズを含み,①注目点,②思考の幅を広げる,③対人関係の特徴に関する整理,の流れで実施するものとした.複数のプログラムを参考に構築したため,今後は同プログラムが内省促進に有効であるという点を検証した後,正式なプログラムとして採用することになる. 3)実験用課題の作成と予備調査の実施:多数ある意志決定課題の中でも,対人面での意思決定を重視し,課題を作成.これまでの先行研究では,課題に提示される他者から何らかの意思表示があり,これに呼応する形で意志を表明する課題が採用されていたが,相互作用は複数の要素が複雑に絡むため,本実験では状況を理解した上で自分の行動を決める,という要素に絞って課題を作成.現在課題に使用する画像をIAPS画像の中から予備調査により選定中. 4)実験用パラメータの決定:Block Designでパラメータを決定.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度の作業の遅れから,課題選定や尺度選定の検討と選択の根拠を整理することに時間を要した.さらに,当初予定していた内省プログラムの欠点を補うため,複数の教育心理プログラムの内容を参考にプログラム案を作成したため,当該プログラムの内省プログラムとしての妥当性を確認する作業が残った. 実験課題に関しては,プログラム用タワー型パソコン故障の影響から作業が遅れているが,具体的に用いる課題候補が決定された点と,実際の実験の撮像パラメータを決定し,課題作成に入ることが出来たという点で,わずかに遅れを取り戻しつつあるといえる.
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今後の研究の推進方策 |
今後は,作成した内省プログラムの妥当性を検証するために,実験被験者とは別の対象者に対し実際にプログラムを実施する必要があると考える.また,対象群には内省の時間は与えないものの,知識として同程度の情報を伝達する群を設け,“内省する”ことの効果を明らかにしたいと考える.その間,さらに別の対象者を用いて意思決定課題の妥当性も検討する.各種プログラムおよび課題の効果が概ね検証できた後に,MRI実験を実施する方針.
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