研究課題
本研究は「脳の可塑性を促す新しい摂食・嚥下リハビリテーション法の開発」(科学研究費助成事業:課題番号23500606)をもとに、作業記憶(ワーキングメモリー)の回復を伴う摂食嚥下リハビリテーション法を開発することを目的としている。すでに構築した視覚刺激呈示システム(視覚手がかりによる方向選択性舌突出課題)に記憶保持の期間を設定し、課題遂行中の被験者において前頭前野の賦活あるいは可塑的変化を光イメージング脳機能測定装置(Spectratech OEG-16)により測定する。舌突出運動は脳の可塑的変化を促進することが分かっている。本研究においても舌突出課題を用いるが、舌突出時に開口運動が行われる。そこで本年度は、厳密な運動パラメータの分離のため「視覚誘導性の舌および顎運動制御における前頭前野の働き」について調べることにした。課題シークエンスは以下の通りである。①課題開始に伴い、ディスプレイ中央に注視点が提示される。課題遂行中、被験者は常にこれを注視する。②注視点提示の1秒後(課題の最初のみ5秒後)、注視点の上・下・左・右の1カ所に、方向指示刺激が提示される。この方向指示点は、被験者にその後行うべき舌運動の方向を指示し、4方向から擬似ランダムに選択される。③被験者は指示刺激が示す方向に舌を突出し、指示刺激が消えるまでその状態を保つ。以上を1試行とし、4方向×3、計12試行を行わせた。さらに、同じ視覚刺激を用い、以下の3課題を行った。1) 指示刺激により前方のみに舌を突出させる前方突出課題、2) 指示刺激により開閉口運動させる顎運動課題、3) 指示刺激による運動(反応)を行わないコントロール課題。同一被験者がこれら4課題を遂行中にfNIRSでの脳機能測定を行った。
2: おおむね順調に進展している
すでに構築されている視覚刺激提示システムに加え、本助成金により必要な物品(筋電計測セット、トリガー出力スイッチ等)が購入できた。これにより咀嚼筋筋活動と脳活動の測定および同期等が可能になり、舌運動と顎運動の分離を試みることができた。また、被験者の眼球運動を測定し(眼球運動測定器)、さらに精度の高い脳活動データが得られることが期待できる。当初の予定通り、作業記憶の回復を伴う摂食・嚥下リハビリテーション法の開発が順調に進展している。
視覚刺激呈示システムおよび脳機能測定装置を用いて、作業記憶を必要とする視覚誘導性舌突出課題を被験者に遂行させ、前頭前野の活動を記録する。目的とする作業記憶に関与する脳活動(賦活)の記録のため、顎運動および眼球運動の影響をできるだけ排除した課題の設定、あるいは差分による解析が可能である。健常被験者にデータを精査し、研究分担者・下堂薗が所属する鹿児島大学医学部・歯学部付属病院霧島リハビリテーションセンターに入院する摂食・嚥下障害患者を被験者として、開発した課題をトレーニングに用いたリハビリ効果を検討する。
すべて 2014
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件)
Aging Sci
巻: 2 ページ: 128
10.4172/2329-8847.1000128
BMC Oral Health
巻: 14 ページ: 124
10.1186/1472- 6831-14-124