研究実績の概要 |
【目的】脳梗塞患者に対して運動療法を施行し血管内皮・血小板・凝固線溶系とサイトカインの反応を解析し、運動療法による脳梗塞再発予防の可能性を検討した。 【方法】当院入院後にリハビリ科に転科した脳梗塞患者について血管内皮機能の指標(vWF, TM)、血小板活性化の指標(βTG, PF4)、凝固線溶機能の指標(TAT, PIC, DD)、サイトカイン(IL-1β, TNF-α, IFNγ)、可溶性Fasを当科転科時(発症後約4週)と退院時(同約8週)で測定した(朝食前採血)。ワーファリン投与、重度意識障害、重度失語症、重症疾患合併の症例は除外した。対照群は非動脈硬化性の脳疾患とした。運動療法は従来通りのリハビリを発症後2~7日から開始し、病状に応じて1日20~120分間、週5日間施行した。 【結果】対象は32例、年齢69.7±9.2歳、初発29例、再発3例。Modified Rankin Scale(mRS):2~4、12段階片麻痺グレード:2~11、motor Functional Independence Measure(mFIM):38±16。対照群は8例、年齢52.7±22.3歳、mFIM:52±12。転科時に比して退院時には、βTG、DDは有意に減少し、PF4は減少傾向を認めたが、TM, vWF, TAT, PICに変動はなかった。対照群では上記指標に有意な変動はなかった。IL-1β, TNF-α, IFNγ, 可溶性Fasに変動はなかった。研究期間中に運動療法による脳梗塞の増悪・再発はなかった。 【考察】運動療法により、脳梗塞患者の血管内皮機能障害は軽減し、血小板活性化は減弱し、微小血栓は減少することが示唆された。運動療法は脳梗塞の再発予防に寄与する可能性が考えられた。なおアポトーシスの関与は不明と思われた。
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