研究実績の概要 |
平成27年度は、「慢性心不全患者の外来心臓リハビリテーションの効果に関する前向き無作為割り付け試験」に対する研究として、 虚血性心疾患患者と心不全を対象とした研究と対照群として健常者を用いた研究の両面から検討を進め、論文発表を含めて多くの成果 が出た。 【背景】本態性高血圧症 (HT)では,耐糖能異常や酸化ストレスが終末糖化産物 (AGEs)の産生を増大し左室肥大を促進させるが,一方で身体活動の増加は耐糖能異常や酸化ストレスを改善する.本研究は,HT患者における身体活動の増加が,AGEs産生と左室肥大に及ぼす影響を検討した.【方法】血圧が140/90mmHg未満に治療されたHT患者39例(69±7歳)を,身体活動を表す平均歩数/日の中央値で2群に分類した.Homeostasis model assessment ratio (HOMA-R),MDA-LDLコレステロール (MDA),血漿ペントシジン (PEN),左室心筋重量計数 (LVMI)を,耐糖能異常,酸化ストレス,AGEs,左室肥大の指標とした.1年後に同じ指標を測定し,前値に対する差を算出した(Δ歩数, ΔHOMA-R, ΔMDA, ΔPEN, ΔLVMI).【結果】MDA,PEN,LVMIの前値は,低身体活動患者(19例)と比較して高身体活動患者(20例)で有意に低値を示した(それぞれP<0.05).Δ歩数はΔMDA(r=-0.37, P<0.05),ΔPEN (r=-0.32, P<0.05),ΔLVMI (r=-0.37, P<0.05)と有意な負の相関を,ΔPENはΔLVMI (r=0.30, P<0.05)と有意な正の相関を示した.【結語】HT患者における身体活動の増加は,AGEs生成を抑制し左室肥大の退縮に寄与した. これらの一連の臨床研究は、今年度は学術雑誌に既に掲載され、英語論文もin printを含めて数編が掲載される予定である。
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