研究課題
本研究の目的は、下肢リンパ浮腫患者を対象に、様々な定量的評価の有用性を評価し、包括的なリンパ浮腫の評価セットを確立することである。研究デザインは非介入型臨床研究。対象は静岡県立静岡がんセンターを受診、続発性下肢リンパ浮腫と診断された患者とした。主要評価項目は、歩行能力(Shuttle Walking Test; SWT)、階段昇降テストとした。結果、42名がエントリーされ、浮腫は片側性31名、両側性11名であった。癌腫は子宮頸癌18名、子宮体癌15名、卵巣癌5名、その他4名であった。医学情報のうち、浮腫重症度により有意差が認められた項目は、リンパ浮腫発症から複合的治療開始までの期間、複合的治療実施期間、蜂窩織炎既往の有無の3項目であった。SWT歩行距離は非軽度群で有意に距離が短く、降段昇降段時間は非軽度群で有意に長かった。浮腫側大腿四頭筋筋力体重比は、非軽度群で有意に低かった。BMIは非軽度群で有意に高かった。足関節背屈可動域は片側性下肢リンパ浮腫の反対側で、非軽度群で有意に大きかった。その他の項目に関しては有意差は認めなかった。SWT歩行距離および階段昇降段時間を従属変数、SWT歩行距離、BMI、浮腫側大腿四頭筋筋力体重比、浮腫重症度を独立変数として重回帰分析を行ったところ、両者を決定する独立変数として、いずれも浮腫側大腿四頭筋筋力体重比が抽出された。さらに、浮腫側大腿四頭筋の筋力体重比40%未満と40%以上に分類したところ、前者では非軽度群で有意にSWT歩行距離が短く昇段・降段時間が長かった。下肢リンパ浮腫が重症になると、浮腫側の大腿四頭筋筋力が低下してい場合に、運動耐容能および階段昇降段に影響が生じ、運動機能低下の一要因として関与していることが示された。本研究に用いられた評価項目は、リンパ浮腫の動的な側面(運動機能)の評価セットとして有用であることが示唆された。
すべて 2017 2016
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (11件) (うち招待講演 11件) 図書 (1件)
Support Care Cancer
巻: - ページ: -
10.1007/s00520-017-3671-2
リンパ学
巻: 39 ページ: 31-36