研究課題
本研究の目的は、研究代表者らが本邦において初めて確立した1H-magnetic resornance spectroscopy(MRS)法により異所性脂肪蓄積の一つである心筋内中性脂肪(TG)量を非侵襲的に測定し、運動プログラムや治療介入の効果判定に応用することである。本年度は、肥大型心筋症25例、高血圧性心疾患10例に対し1H-MRS法を用いて心筋TG量を測定した。高血圧性心疾患例の心筋TG量は、肥大型心筋症例に比し有意に高値であった(2.14 ± 1.29 vs 1.09 ± 0.72%, P<0.005)。高血圧性心疾患例ではガドリニウムによる遅延造影は認めなかったが、5例の肥大型心筋症に遅延造影を認めた。心筋TG量は、遅延造影の有無による有意な差を認めなかった(1.22 ± 0.72 vs. 0.64 ± 0.49%, NS)。心筋TG量は、肥大型心筋症において左室重量と有意な負の相関(r = -0.41, P < 0.04)、高血圧性心疾患において心拍出量と有意な負の相関(r = -0.64, P < 0.05)を認めた。多変量解析において、BMIと左室重量は心筋TG量の独立した規定因子であった。心筋TG量は、心形態や心機能との関連を示し、心筋における脂肪酸代謝やその蓄積に疾患特異性が存在することが示唆される。現在、心筋内TG量と骨格筋や肝臓内TG量の同時測定を行っている。また、心臓リハビリテーション前後の心筋TG量の変化、運動強度・種類・期間との関連について検討中である。基礎研究では、高脂肪負荷およびアンジオテンシンII投与による心肥大モデルマウスを作成し、心筋TG量と脂質・糖代謝関連指標、心機能や運動耐容能との関連について検討している。
2: おおむね順調に進展している
1H-MRS法を用いて肥大型心筋症と高血圧性心疾患例における心筋TG量測定を行った。その結果、高血圧性心疾患例の心筋TG量は肥大型心筋症例に比し有意に高値であった。これらの結果を英文誌に発表した。さらに、1H-MRS法を用いて心筋内TG量、骨格筋TG量、肝臓内TG量を同時測定し、種々の血液生化学マーカーとの関連に特徴を有することを見出し、現在詳細な検討を継続している。基礎研究に関しては、心肥大代謝異常モデルマウスを用いて、解析を継続している。
現在のところ、研究計画の大幅な変更や研究遂行のための大きな問題等はない。今後も、1H-MRS法を用いた心筋内TG量、骨格筋TG量、肝臓内TG量を同時測定したデータを詳細に解析する。その結果を、国内・海外学会で報告することにより国内外の研究者と意見交換を進め論文作成・投稿を行う。心血管疾患症例に対して運動介入を行い、心筋TG量の変化と運動強度・種類・期間との関連について検討を行う。基礎研究に関しては、心肥大代謝異常モデルマウスを作成し解析を進め、さらに運動介入による心筋内TG量の変化、介入効果を基礎的に検証する。
平成27年11月での国際学会で研究内容の報告を行い、海外研究者との意見交換を行う予定であったが、日程調整が最終的につかず出張を断念した。この学会参加費に計上する予定の予算分を、次年度に繰り越した。
前年度の繰り越し分は、動物モデル解析のための各種抗体や試薬、学会発表や情報交換のための参加費旅費に使用する計画である。
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