研究実績の概要 |
内包に梗塞が生じた場合のリスクや治療の基礎検討に適した内包梗塞モデルの確立を目指し、光感受性色素と光ファイバーを用いた本研究に着手したが、H27年度中にKim HSらにより同手法が発表され(JCBFM, 2014)、本法の新規性が無くなった。そこで本研究の狙いを手法の開発からリハビリテーションの効果、メカニズムの検討へシフトした。 血液中に添加しておいた光感受性色素(20mg/kg ローズベンガル)に対して内包部に刺入した光ファイバー(径100μm)よりLASER光(532nm)を直接照射して光化学反応を誘起させ、生じた酸素ラジカルによる血管壁損傷により梗塞を発生させる手法にて内包梗塞の作成を試みたが、光ファイバー刺入の際の脳内出血による光反応の阻害が解決できず、局所の内包梗塞を再現性良く作成できなかった。そこで総頸動脈から径45μmのマイクロスフェア(MS)を注入し、内包梗塞に似た症状を誘発する手法にてモデルを作成した。梗塞後の運動療法により認知機能の回復が促進されることは既知であるが、梗塞前の運動習慣の有無を想定し、運動群と非運動群にMSを注入し、その後の回復を比較した結果、MSが運動麻痺を生じない個数(3,000個以下)であれば認知機能が有意に回復することが示された。一方、3,500個を越える数のMSを注入すると24時間後の運動麻痺もより重篤となり、MS注入前の運動負荷による認知機能の回復効果は見られなかった。MS3,000個または3,500個を注入した脳の凍結切片をヘマトキシリンにて染色し光学顕微鏡下で観察した結果、3,500個注入群では線条体~視床領域に明らかな梗塞巣が確認された。
|