研究課題
本研究の目的は、脳卒中患者を対象として、効果的なリハビリテーション(リハビリ)に求められる心理・性格特性と、その基盤となる脳内ネットワークを明らかにすることである。そのために、種々のMRIの情報を利用することが特徴である。具体的には、回復期リハビリ病棟入院中の亜急性期の脳卒中患者を対象とし、入退院時に各種の心理評価、麻痺の程度、日常生活動作能力などの臨床評価、リハビリ評価とMRI撮像を行う。平成26年度は、心理・臨床評価体制を構築し、さらに、MRIデータ収集・保存システムを構築した。そして、実際に、臨床・画像データの収集を開始した。27年度は、脳卒中の病巣抽出からネットワーク解析にいたる構造的MRIの解析システムを完成させた。症例は、目標の40例を集めることができた。平成28年度は、さらに症例の蓄積を行い、初回脳卒中患者172名の心理評価、リハビリ評価を行った。平成29年度は縦断的解析を行い、初回脳卒中患者263名(脳梗塞160名、脳出血103名)の心理評価、リハビリ評価を行い、そのうち、152名(脳梗塞87名、脳出血65名)は退院時にも評価ができた。各種心理評価の間では、うつ、やる気、不安スコア、レジリエンスは、入院時、退院時とも、互いに有意に相関していた。臨床評価と心理特性との関連では、入院時、退院時とも、麻痺の重症度はうつと相関がみられたが、日常生活動作の障害の重症度は、うつだけでなくやる気とも相関していた。うつとやる気は類似した症状であるが、神経基盤や活動への影響に違いがあることが推察された。また、構造的解析で、脊髄皮質路が病巣で障害を受けた程度と麻痺の重症度や日常生活動作の障害の重症度との間に有意な相関が見られている。さらに、失語症との関連では、予備的解析で、言語表出能力は病巣の容積との相関がみられている。今後、さらに詳細な検討を行っていく予定である。
1: 当初の計画以上に進展している
当初計画していたよりも早いペースで症例が集まっており、解析が進んでいるため。
30年度前半終了時にデータベース収集を完成させる予定である。そして、年度後半にはデータ解析を完成させる。もしも、当初計画した解析法でネットワークの同定が困難と予想された場合、研究計画書の「研究が当初の計画通りに進まない時の対応」に準じた方法で発展的に解析を行う。
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分子脳血管病
巻: 17 ページ: 83-86
Neurorehabilitation and Neural Repair
巻: 31 ページ: 561~570
10.1177/1545968317697031