研究課題
本研究の目的は、脳卒中患者を対象として、効果的なリハビリテーションに求められる心理・性格特性と、その基盤となる脳内ネットワークを明らかにすることである。そのために、MRIの情報を利用する。具体的には、回復期リハビリ病棟入院中の亜急性期の脳卒中患者を対象とし、入退院時に各種の心理評価、麻痺の程度、日常生活動作能力などの臨床評価、リハビリ評価とMRI撮像を行った。平成30年度は、これまでに収集した患者データに関して、初回脳梗塞患者で片麻痺をみとめたもののうち、MRIを施行し、失語症や高次脳機能障害、精神疾患を合併している例などを除外した連続141症例(平均年齢67.4歳、男性90名)について、解析を行った。病巣分布としては、大脳皮質 26名、内包・基底核 60名、大脳皮質+内包・基底核 9名、 脳幹・小脳 41名、大脳皮質+脳幹・小脳 5名であった。入退院時に施行したFugel-Meyer Assessment (FM)の上肢運動項目から求めた上肢FMの変化(改善)量を従属変数として、年齢、発症から入院までの日数、入院期間、入院時重症度(最大上肢FIMスコアと入院時上肢FIMの差)、入院時の心理評価(「やる気スコア」または「こころとからだの質問票(PHQ-9)」、心理評価と入院時重症度の交互作用(心理評価x発症時重症度)を独立変数として、ステップワイズ法で重回帰分析を行った。その結果、心理評価としてやる気スコアを投入した場合のみ、心理評価と入院時重症度の交互作用がモデルに寄与した(p<0.0001)。やる気スコアは、年齢、入院時重症度や発症から入院までの期間とは相関していなかった。また、これまでの解析では特定の病変部位との関連は認めていない。以上より、片麻痺が重度な程、アパシーの傾向が低いことが、麻痺の回復に関連していることが示唆された。
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総合リハビリテーション
巻: 46 ページ: 601-607