本研究では、聴覚によるバイオフィードバックを用いた運動課題練習が、脳卒中片麻痺患者の足関節の運動制御や歩行に及ぼす影響を明らかにすることを目的とした。リハビリテーション分野での聴覚バイオフィードバックについての有効性をより明確にし、その更なる普及を目指す。具体的内容としては、1)不全麻痺を呈する脳卒中片麻痺患者の足関節に対して、聴覚での運動課題練習が運動制御能力へ及ぼす影響を明らかにする。2)聴覚での運動課題による運動制御能力向上のメカニズムを調べ、また歩行などの機能面への影響を明らかにする。 足関節の運動制御に関しては、聴覚バイオフィードバックを用いる際の音デザインが非常に重要であり、また音のみを頼りに目標を関節運動で追随するような運動課題は、かなり難易度が高く、聴覚バイオフィードバックに加え、視覚バイオフィードバックも必要と思われた。聴覚バイオフィードバックのみ、或いは視覚バイオフィードバックのみのように単一の感覚入力より、視覚と聴覚のように2つの感覚を使用した方が良いとされているが、それぞれの長所・短所を考慮し、適切な音デザインの作成が重要であることがわかった。具体的には、視覚情報は空間的情報の伝達に優れているのに対し、聴覚は時間的情報の伝達や注意を引くのに優れている。そのため、本研究では、空間的情報(目標と関節角度)を視覚で、課題でエラーが生じた際(目標と関節角度がずれた際)に聴覚で注意を引くことで、より効率的に運動学習ができることを示唆する結果が得られた。今後は、この結果を考慮して、より機能的な動作への聴覚バイオフィードバックの応用を検討していく。
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