研究課題/領域番号 |
26350605
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研究機関 | 首都大学東京 |
研究代表者 |
浅川 康吉 首都大学東京, 人間健康科学研究科, 教授 (60231875)
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研究分担者 |
山口 晴保 群馬大学, 保健学研究科, 教授 (00158114)
池添 冬芽 京都大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (10263146)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 大腿四頭筋 / 超音波エコー画像 / 高齢障害者 |
研究実績の概要 |
本研究は、高齢障害者にみられる高度に萎縮した大腿四頭筋に焦点をあて、超音波エコー画像の所見から筋力の回復可能性を解明する研究である。研究2年目はリハビリテーションプログラムとして大腿四頭筋の筋力増強に取り組む高齢障害者を対象にリハ経過に沿った経時的なデータを得ることとした。 平均年齢81.3±9.3歳の高齢障害者13名からベースラインデータを得て、このうち9名について経過を追い延22件のデータを収集した。 本年度得られた知見として最も興味深いものは対象者がリハビリテーション受療中にもかかわらず健肢の筋厚が増加するのに対して患肢のそれは減少傾向を示したことである。統計学的有意差は認めなかったものの健肢の筋厚(mm)は20.2±5.6から20.7±8.0と変化するのに対して患肢のそれは21.3±0.6.3から20.9±7.5へと変化していた。この間(およそ1ヶ月)に下肢筋力(kg)は健肢では13.5±14.1から15.8±10.4へと、患肢では10.4±6.4から12.4±7.6へといずれの側も増加しており、歩行機能を含むADLの状態(FIM得点)も92.1±24.3から107.9±20.9へと向上していた。大腿周経(cm)と筋厚とは相関は健肢では認められるが(ρ=0.697)、患肢では認められなかった。 これらの結果は、リハビリテーションによってADL能力が改善する際に健肢では筋厚の増加、筋力の増強、周経の増加という変化が生じているのに対して、患肢ではそうした変化はみられないことを示唆する知見である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまで筋断面積(筋厚)、筋力、周径の3者は関連ある指標とみなされてきた。しかし、本研究の対象者-26年度研究に参加した地域在住高齢者に比べて半分程度の筋厚しかない“やせ細った大腿四頭筋”の高齢者-の患肢における筋力回復ではこうした関連はみられない可能性がある。 現時点では対象者数が少なく、当初予定していた筋力が回復できた群と筋と回復できなかった群の類型化には至らず、回復筋に特徴的な画像所見を得ることはできなかった。しかしながら、小規模ではあったものの予定通り縦断データを得ることができ、そのデータから筋厚減少下での筋力回復という新たな現象を発見することができた。この現象は高度に萎縮した大腿四頭筋の筋力回復の初期には量的回復(筋断面積の増加)に先んじて固有筋力(神経系因子)の回復が重要な役割を果たす可能性を示しており、高度萎縮筋に対するリハビリテーションプログラムを考案するにあたり重要な知見を得られたと考えている。本年度は対象者数の確保に難渋したものの今年度ベースラインデータを得た13人については今後も追跡できる見込みであることも加味し、28年度の研究(介入)に向けて内容的にはおおむね順調に進めることができたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度にベースラインデータを得た13人の追跡に加え、新規に協力施設を得られる見込みであることから、対象者数については増加できると考えている。28年度は本研究の最終年度であり、26年度に収集したいわゆる元気高齢者の大腿四頭筋と27年度に収集した障害高齢者のデータを連結し、相対的な筋厚分布から高度萎縮筋の定義を明確にしたうえで、短期集中方式の筋力増強プログラムを提供する。27年度のデータ収集を通じてリハビリテーション受療中の対象者を縦断的に追跡するノウハウを得ることができたので、当初予定にそってデータを収集し、増加筋力を従属変数、超音波エコー画像評価の各指標を独立変数とする筋力増強効果の予測式の確立に向けて研究を推進する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究成果発表のための学会出張を予定していたが研究代表者の異動(26年度群馬大学から27年度首都大学へ)があり、当初予定の出張日程が確保できず旅費を執行できなかった。一方、データ収集協力施設の事情から当初予定していなかった機材等の保管庫や事務用品などが必要となり物品費の執行額が増加した。
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次年度使用額の使用計画 |
データ収集に際して協力施設を増やす見込みであることから施設側の事情に応じて適切な物品を購入する。また、研究代表者の異動(26年度群馬大学から27年度首都大学へ)の影響で研究成果発表が26年度、27年度と停滞したため28年度は論文発表などを増加させる。以上により次年度使用額は適切に使用する予定である。
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