研究課題
今回,反射マーカー等の装着を必要とせずに簡便にモーションキャプチャーが可能なセンサであるKINECTを活用して,3 次元のVR環境で上肢機能障害に対する評価及び訓練が可能な新しい上肢機能評価・訓練システムを開発した.本システムの特徴は,①リーチ運動の目標となるターゲットを対象者の上肢機能レベルに合わせて3 次元空間上で自由に設定できる, ②訓練の経過を逐次データとしてPCに保存できる,③視覚フィードバックやBGM等によって対象者を飽きさせることなく訓練できる,④パソコンを置けるスペースがあればどこでも実施できる,⑤3D対応モニタと3D眼鏡により,ステレオ立体視を実現している等である.本システムの妥当性を検証する目的で,健常成人10名を対象に,KINECTによって取得される手掌の三次元座標の妥当性を検証した.その結果,基準点から横方向,上下方向(高さ),奥行き方向に手掌部を移動した際,KINECTで測定された値もその値に比例して変化することが確認され,十分に妥当性があることが確認できた.さらに,本システムを用いた脳卒中患者に対する上肢機能訓練の効果を検証するため,脳梗塞により右片麻痺を呈し,発症後5か月が経過した回復期リハ病棟に入院中の40歳代男性に対して,AB法のシングルケースデザインによる検証を行った.介入期間は2週間,訓練時間は1回10分とし,1日2回の訓練を通常の作業療法とは別に行った.効果判定指標には,BBTを用いた.その結果,BBT得点はベースライン期の平均が43.0,介入期の平均が58.0であり,介入期の2回目と3回目の評価ポイントは,ベースラインの平均値+2SDの56.4を上回っており,本システムの有用性が示唆された.今後は,継続して本システムの有用性を検証するため,評価指標の信頼性と妥当性の検証および,多施設間の無作為化比較試験についても実施する予定である.
すべて 2017 2016 その他
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (2件) 備考 (1件)
Front Hum Neurosci
巻: 11 ページ: 1-10
10.3389/fnhum.2017.00010. eCollection 2017.
http://www2.am.nagasaki-u.ac.jp/higashi-lab/2reseach%20outline/ro.html