研究課題/領域番号 |
26350637
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研究機関 | 浜松大学 |
研究代表者 |
高木 聖 浜松大学, 保健医療学部, 教授 (70712305)
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研究分担者 |
山下 剛範 鈴鹿医療科学大学, 保健衛生学部, 助教 (10410937)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 糖尿病性骨減少症 / トレッドミル走行 / 大腿骨骨密度 / 糖・脂質代謝 |
研究実績の概要 |
本年度の研究目的は、2型糖尿病モデル動物(KK-Ayマウス)を用いてトレッドミル走行による大腿骨近位部・骨幹中央部の骨密度変化を調べることであった。 まず最初に、実験に用いるトレッドミル走行の強度(スピード)と時間の設定について検討した。正常モデルマウスを用いた先行研究において大腿骨骨密度の増大に有効であった高強度・短時間(12m/分・30分間)の走行ならびにKK-Ayマウスを用いた研究において糖・脂質代謝の改善に有効であった低強度・長時間(5m/分・120分間)走行の2通りの運動負荷にて実験を実施した。非走行群をコントロールとした。生化学的検査ならびに糖負荷試験の結果から、高強度・短時間の走行は低強度・長時間のそれに比べ、血糖値や血中脂質値、耐糖能におよぼす影響は少なかったことから糖・脂質代謝経路に関与することなく、骨に対する機械的刺激要因となり得ることが確認できた。本研究ではトレッドミル走行と2型糖尿病における骨密度変化との関連性を機械的刺激要因と糖・脂質代謝要因の2つの側面から分析することを特色としているため、負荷強度・時間の設定が明確にできたことは今後の実験を進める上でとても意義深いことである。 次にそれぞれの設定強度・時間によるトレッドミル走行を5日/週、10週間継続し、その後の右大腿骨近位部・骨幹中央部の骨密度変化を二重X線吸収法(DXA)にて測定した。近位部の骨密度は低強度・長時間にて実施した群において高強度・短時間実施群ならびにコントロール群よりも有意に高値であった。骨幹中央部については低強度・長時間実施群がコントロール群と比較して有意に高値であったが、高強度・短時間実施群との間には差はみられなかった。 以上のことからトレッドミル走行は2型糖尿病罹患者の骨密度低下の予防に寄与する可能性が示唆され、また、低強度・長時間の運動が適していると考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究においては、運動療法(トレッドミル走行)の骨密度におよぼす影響を機械的刺激要因と糖・脂質代謝要因の2つの側面から分析することを目的としている。そこでまず、トレッドミル走行を高強度・短時間で実施する群と低強度・長時間にて実施する群に分け、前者が糖・脂質代謝に影響を与えることなく骨への機械的刺激になり得るか否か検討した。低強度・長時間の走行においては血糖値・血中脂質値ならびに耐糖能の改善がみられたものの、高強度・短時間の走行においては血糖値・血中脂質値への影響は少なく、耐糖能におよぼす影響はほとんどみられなかった。このことからトレッドミル走行の設定強度・時間はおおむね妥当であると考えられた。 また、各設定強度・時間でのトレッドミル走行後の大腿骨の骨密度変化については、低強度・長時間群において近位部・骨幹部ともにコントロール群と比べ有意に高値であった。 以上のことから今後の実験に用いるトレッドミル走行の強度・時間が明確にされたと同時に、トレッドミル走行が2型糖尿病モデルマウスの大腿骨骨密度変化に影響をおよぼす可能性が示された。また、低強度・長時間の走行がより有効であることが示唆された。
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今後の研究の推進方策 |
H26年度の実験結果を基に、今後は12m/分・30分間ならびに5m/分・120分間の2通りのトレッドミル走行にて運動負荷を実施する。 10週間のトレッドミル走行実施後に体脂肪量の変化を3DマイクロX線装置にて測定し、骨密度変化との関連性を検証する。また、大腿骨近位部・骨幹中央部それぞれの骨質変化を解析する。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初に予定していた研究補助者への謝金が不要となったため、差額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
翌年度分の助成金と合わせて、実験動物および生化学実験用試薬の購入に使用する予定である。
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