本年度はトレッドミル走行による骨質ならびに骨質マーカー値の変化を明らかにすることを目的とした。トレッドミル走行はこれまでと同様に、高強度・短時間(12m/min・30分間)ならびに低強度・長時間(5m/min・120分間)にて5日/週、10週間実施した。非走行群をコントロールとした。 走行開始から10週後に右大腿骨を摘出し、マイクロX線CTスキャナーを用いて近位部(大腿骨頭下縁から920μmの範囲)ならびに骨幹中央部(大腿骨中央部920μmの範囲)の骨微細構造を撮影するとともに、近位部における海綿骨面積、皮質骨面積、全骨面積、中央部における皮質骨面積と全骨面積を測定し、これらについて3群間で比較した。その結果、海綿骨部の微細構造、皮質骨部の微細構造ともに3群間における違いはみられなかった。また、いずれの骨面積についても3群間で有意な差は認められなかった。 また、骨質マーカーとしてペントシジンならびにC反応性タンパク質(CRP)の血中濃度を測定した。ペントシジンについては3群間に有意な差はみられなかったが、CRPについては低強度・長時間実施群の値がコントロール群に比べ有意に低かった。高強度・短時間実施群とコントロール群との間には差はみられなかった。このことからCRPは運動による骨質変化を早期に示すマーカーとなり得る可能性が示唆された。 これまでの結果から2型糖尿病罹患者に対する低強度・長時間のトレッドミル走行は糖・脂質代謝を改善させ、大腿骨骨密度に有益であることが示された。しかし、骨質については変化がみられなかったことから、さらに有効な方法を検討することが今後の課題と考えられた。
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