研究課題
不活動状態に陥ると目立った外傷や組織損傷がないにもかかわらず疼痛が生じることがあり、このような痛みがさらに活動性の制限やひいては生活の質の低下につながる。そのため不活動による疼痛の発生メカニズムの解明は重要である。これまでの研究から不活動によって痛みが生じる原因は神経成長因子(NGF)の作用によることを明らかとしてきたが、メカニズム解明のためにはNGFが産生されるきっかけを調べることが必要である。不活動状態の4週目の組織像からは明らかな炎症像は認められず、むしろ抗炎症性物質の発現が認められたため、不活動早期の状態を確認する必要があると考え、今年度は早期の状態を調べることを目的の一つとした。酸化ストレスは組織損傷がなくても、何らかの状況の変化によって産生される可能性があり、NGF産生のきっかけとなりうる。この可能性を確認すべく、不活動状態1ないし2週目における腓腹筋ならびにヒラメ筋で酸化ストレスの発現状況を調べた。その結果、ヒラメ筋においては抗酸化作用のある酵素の活性が認められ、組織の損傷がないとしても炎症性サイトカインが産生される状況が生じている可能性が確認できた。ただ、腓腹筋においては確認に至らず、今後さらなる検討が必要である。またDRGにおけるNGF陽性細胞の割合は不活動状態の早期で増加する傾向が認められた。ただ対象数が不十分であり、さらに対象数を増やす必要がある。一方、不活動によって生じる痛みに対する理学療法効果を確認する目的で、今年度はマッサージを施行した。その結果、マッサージを行った群では、疼痛発生がある程度抑制され、NGFの発現割合もある程度減少することが確認できた。本研究において実施した理学療法の中では温熱療法の効果が最も高く認められ、今後はその効果とNGFならびに他の因子との関係を明らかにしていくことで、メカニズムの解明につながると考えている。
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