積極的な身体運動は、非感染性慢性疾患の悪液質(カヘキシー)に由来する骨格筋機能低下の治療や進行予防に有効であるが、臨床で遭遇する患者の中には、原疾患の特異的な病態や二次的な廃用症候群などによって運動制限を有する者も多く存在するため、その代償となる治療法の早期開発が求められている。そこで本研究課題では、骨格筋の加温とメカニカルストレスを組み合わせた治療介入が、カヘキシーに由来する骨格筋萎縮とそれに伴う代謝異常の進行過程に及ぼす影響とその作用機序を解明することを目的としている。 骨格筋萎縮に関する実験では、(1)グラム陰性細菌の菌体成分であるLPSをC2C12筋管細胞に暴露するとp38MAPKの活性化と萎縮が生じるが、LPS暴露によるp38MAPKの活性化と萎縮は温熱刺激の負荷により抑制されること、(2)合成グルココルチコイドであるデキサメタゾンをC2C12筋管細胞に暴露するとFoxO1/3aの活性化と萎縮が生じるが、デキサメタゾン暴露によるFoxO1/3aの活性化と萎縮は温熱刺激の負荷により抑制されることを明らかにした。 骨格筋代謝に関する実験では、(3)電気刺激誘発性の筋収縮(メカニカルストレス)をC2C12筋管細胞に負荷するとインスリン抵抗性が改善するが、その改善にはHSP72の発現増加が寄与する可能性があること、(4)電気刺激誘発性の筋収縮(メカニカルストレス)をラットに負荷するとインスリン抵抗性が改善するが、その改善にはp38MAPKおよびJNKの不活性化とAS160/TBC1D1の活性化が寄与する可能性があることを明らかにした。
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