研究課題/領域番号 |
26350640
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研究機関 | 愛知医科大学 |
研究代表者 |
大道 美香 愛知医科大学, 医学部, 助教 (30581079)
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研究分担者 |
大道 裕介 愛知医科大学, 医学部, 講師 (50506673)
内藤 宗和 愛知医科大学, 医学部, 准教授 (10384984)
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研究期間 (年度) |
2014-04-01 – 2017-03-31
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キーワード | 不動化 / 慢性痛 / 予防 / 運動 / 情動行動 |
研究実績の概要 |
一旦慢性痛に陥ってしまうと、その多くは難治性の一途をたどるケースが少なくない。予防的見地からの早期の介入が極めて重要であると考え、慢性痛発症前の予防的運動(前運動)が慢性痛に及ぼす効果について検証を行った。その結果、前運動を負荷した群は未運動群よりも有意に慢性的痛み行動の強度、広がりが抑制されるという結果を得た。しかし不安・抑うつなどの情動行動を示す動物においては前運動を負荷しても疼痛の抑制効果が得られない傾向がある。そこで、今年度は純粋な自発運動量による慢性痛の抑制効果を評価するために、生得的・潜在的な心理・精神的機能の評価にもとづく動物の選別を行い、精神行動を評価した。その結果をもとに動物の選定を行い、ギプス固定後慢性痛(以下CPCP)モデル作成前に前運動負荷を与え、慢性的痛み行動の評価を行った。さらに自発運動量と慢性的痛み行動の発現の関係について検討を行った。今年度は活動性、不安およびうつ傾向の評価として(1)高床式十字迷路(EPM)試験(2)オープンフィールド(OF)試験を実施した。行動試験後2週間の自発運動(ランニングホイールを用いた運動)を行った後、CPCPモデルを作成し、痛み行動の評価を5週間行った。 EPM試験においてオープンアームに対する侵入回数が多く・滞在時間が長い無処置のラットは自発運動量が多く、CPCPモデル作成後の慢性的痛み行動の抑制効果が高い傾向が示された。また、OF試験においてオープンフィールド中心領域の進入回数の多い無処置のラットも同様の傾向を示した。 以上の結果から、不安・抑うつ傾向を示さない動物は自発運動量も多く、運動量の多さに応じて慢性的痛み行動が抑制する傾向が認められた。高フィットネス状態は慢性痛を予防しうる可能性が示唆された。また、生得的な抑うつ・不安傾向は,運動習慣の形成を阻害し,慢性痛発症の助長因子と成り得る可能性が考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
昨年度報告したように、平成26年度に研究室の大規模の改装により研究の環境整備のため研究課題を1年遅れで実施したことである。 また、27年度に計画をしていた酸化損傷組織を探索し、前運動が該当組織の損傷に及ぼす影響についての検証では、生得的・潜在的に心理・精神機能の脆弱性を所有せず、運動量依存性に疼痛抑制を確認できたCPCPモデル動物を用いて、運動効果器(骨格筋)において酸化ストレス障害および抗酸化能について免疫組織学・分子生物学的解析を行ってきた。 未運動群と前運動群のそれぞれの運動効果器(骨格筋)で、抗8-OHdG モノクローナル抗体(DNA酸化損傷マーカー)を用いて酸化障害の局在変化を検索しているが、現在、染色の条件検討に時間を要しており比較検討するまでに到達できていない。
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今後の研究の推進方策 |
平成28年度は、27年度までに検討した内容を引き続き実施し、前運動が酸化損傷組織に及ぼす影響について検証する。そのために生得的・潜在的に心理・精神機能の脆弱性を所有せず、運動量依存性に疼痛抑制を確認できたCPCPモデル動物を用いて、抗酸化酵素の増大や活性化を誘導し、酸化ストレスによる組織損傷を抑制する可能性がある運動効果器(骨格筋)で抗8-OHdG モノクローナル抗体を用いて酸化傷害の局在変化や抗Mn-SOD抗体、抗カタラーゼ抗体を用いて、各組織における抗酸化機能の局在変化を免疫染色にて検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
初年度の実験計画が今年度に移動したことや、高架式十字迷路・オープンフィールドの購入価格が予定額より安く購入できたこと、また免疫組織学的・分子生物学的検討が進んでいないことにより試薬や抗体購入に予算が使用できなかったため次年度使用額が生じた。
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次年度使用額の使用計画 |
平成28年度の研究費の使用は、実験計画からその支出の多くは試薬代、実験用器具代、動物代である。特に、免疫組織化学染色、ELISA、ウエスタンブロッティング法に使われる抗体・試薬代の割合が多くなると思われる。また、これらの結果をまとめ、論文投稿に向けて翻訳・校閲費に予算を使用する。
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