研究課題
本研究は,声帯部分の抵抗を電気回路の可変抵抗で表したオリジナルの咳嗽モデルで,流量波形をシミュレーションするものである.今年度は食道バルーンを用いて胸腔内圧を測定し,シミュレーションに取り入れ,精度の高いシミュレーションモデルがほぼ完成した.現在データをまとめて関連学会へ発表の準備をしている.また,今年度は簡易型の機器を用いて消化器外科,呼吸器外科,食道癌手術前後の咳嗽時の流量波形の測定をしている.術後の咳嗽力低下は,創部痛,肺活量低下,呼気筋力低下だけでなく,声帯機能の低下の影響が大きいことを発見した.食道癌では声帯麻痺が起こりやすいとされているが,我々のデータでも声帯機能の影響を受けやすい傾向を認めた.これら研究成果についても現在関連雑誌への投稿を進めている.本研究の結果,咳嗽時の流量波形のシミュレーションが可能となり,咳嗽力低下の要因が推定できる事が示唆された.しかし現状では精密機器での結果であり,臨床適応可能な簡易型の機器では,まだその精度は不十分である.上記で述べた臨床データも多くの機器を用いての結果であり,咳嗽時の流量波形の解析までは進んでいない.本研究の最終目標は,咳嗽波形のみで咳嗽力低下の要因を判定する事であるため,与えられた研究期間では最終目標に達することが出来なかった.今後は簡易型のスパイロメーターを用いて,現行の機器と同等の評価が可能か明らかにしていく必要がある.そして簡易型の機器での測定精度を高め,シミュレーション波形との相違点から,周術期患者の咳嗽能力低下のトレンドだけでなく,その要因についても明らかにしていきたい.
すべて 2016
すべて 学会発表 (12件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)